04.(´Д`)デラレナイ…

 アタシの名前は"ビアンカ・フォルゴーレ"、ただいま単独行動中。


 パーティを結成した後、近辺を散歩(探索)する許可を得たので、川沿いを上流へ向かうことにした。


「やっぱり冷たい空気が気持ち良いなー。それに1人の方が気が楽だぁ」


 CBBでは基本的に人間=敵なので、班仲間であっても気が抜けない。

 何が恐ろしいって、オープンワールドMMOでサバイバル要素が強め且つ対人戦PvP推奨の殺伐とした中で、面倒にも飛び道具がほぼ制限されているからどうしても接近戦をしないといけない。なのに名前を聞いても倒してインベントリを漁るまでしないと判別がつかない、仲間であっても偽名だった場合がざらにある上にパーティの掛け持ちが可能なのだから混沌としていると言っても過言じゃない。


 一時期流行ったPK行為に、一旦標的をパーティに誘い込んだら四方を囲んで班長がソイツをキックして一方的にボコる手段があった。

 ただでさえ競技人口が少ないのに、それにより新規勢が一気に減ったのは言うまでも無い。


 その頃丁度アタシが生まれたのもあって、そういうのに絡まれたのも一度や二度では無い。でも一度痛い目を見れば対策を練るのは当然だ。


 十分に腕を磨いたら、次に出会した時にわざと囮になって呼び集めた被害者の会のみんなを待って、自分から班を抜けてタコ殴りにしてやった。

 24vs5はやり過ぎと言われたが、同じ事をする連中が現れなくなるまで繰り返し、段々と人数も増えた。仕返し組の中には被害に遭った事の無いトッププレイヤーも何人か混じっていて、この為に新規キャラを作り参加していたので最後まで気付かれてなかったなー。

 その時に結成した同盟クラン"婦陣會レディース"では、今でも語り種になっている。


 トンファーが打撃武器だから打撃系全般を極めたけど、結局トンファーを一番多く使っている。

 叩く、突く、受ける、掘る、揉む、解す、捏ねるetc…凡ゆる場面で非常に使える武器だ。

 このCBBの中でなら、手の中でぶん回したトンファーの威力は樹木を薙ぎ倒すことだって簡単に出来る。

 因みに、打撃武器による金的攻撃はCBB最大激痛ポイントであり、公式大会では唯一の反則行為である。

 ふと、"オリジナル"を介さずにトンファーを振り回したくなる。


 ぬるぺちょぉ…

「あ、やっちった」


 魚の塩焼き食べてから脂で手がベッタベタのままだった。あの魚めちゃんこ美味いけど、めちゃんこ脂がノってて、もう一尾食べたら胃がもたれそうな気がする。

 とりあえず手と一緒にトンファーを川で洗う。


「キィー、ちべたい!」


 カバンにしまっている混ぜたら危険な洗剤も使う。混ぜて相手を中毒にさせる時に使うけど、本来の使い方でもよく活躍する。


「あーした、あーさって、しーあーさってー♪

 あーした、あーさって、しーあー……?」


 動物は人を避けると聞いたので気持ち良く歌っていると、逆に何かが近付いて来る気配を感じた。


 アーサー班の皆とは違う方向から複数の足音と藪や枝を踏み越える音がする。

 5人か、多くとも6人。忍ぶことも無く何か棒状の道具で障害物を薙ぎ払って歩いて来る。


 川は上流ほど岩が大きくゴツゴツしている。その中でも一際大きな岩の上に移動する。


 やがて見えて来る物音の正体は、こ汚い豚のコスプレをした複数の男達だった。


「ブゥ『ヒトの女だ。逃がすな』」


 ブヒブヒ言うのに重なって自動翻訳が働く。どう考えても敵だ。


「ブフ『囲め…』ブギュ!?」


 足下の岩の表面をトンファーで削り飛ばした。

 鼻の穴を狙って直撃させたのに、仰け反る程度とは意外と頑丈だ。


「へ〜ブタって我慢強いんだな〜。ベーコンになるまで黙って我慢してくれたら嬉しいんだけどな〜」


 軽く振るったトンファーの感触が心地良い。胸が高鳴る。


「今日の晩飯にしてやらぁ!!!」


§


 クサイ、グロい、気持ち悪い……。川面に映る自分の顔は、蒼白して動揺もして、おまけに胃液と脂で汚れてる。


 そんな時に飛んで来たDMに、何故だか胸がちょっぴりだけ楽になる。


『帰って来いビアンカ』

『戦闘中、スグハ無理』


 嘘だ。

 とっくに全員の頭を真っ二つにカチ割っている。


 ただ、CBBでプレイヤーやエネミーが倒されると、装備中のアイテムを残して光の粒子状に飛び散って消えるのに、この豚男達は内容物をぶち撒けていつまで経っても消えないのだ。

 胃の中はとっくに空っぽで、でも呼び戻されているのでフラフラになりながら歩いて帰る事にした。


 しばらく豚肉は見たくも無い。

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