異界ルーレット~追放勇者の成り上がり冒険譚~
塩塚 和人
第1話 勇者召喚と追放
ルミナ王国の玉座の間には、王族と重臣たちが
緊張の面持ちで立ち並んでいた。朝日の光が
窓から差し込み、広間の大理石を赤く染める。
「勇者召喚、開始!」王の号令とともに祭壇の
中央に魔法陣が描かれ、青白い光がゆらめく。
その光の中、ひとり、またひとりと人影が現れた。
まず現れたのは、黒髪の少年、如月勇気。勇者
としての力がほとばしるように立っていた。王国の
重臣たちは息を飲み、成功を確信する。
次に現れたのは、冷静な瞳の少年、早乙女仁。
賢者の資質を放つその姿に、王国の魔法師たちも
目を丸くする。戦術家としても期待できる逸材だ。
三人目は聖女、五十嵐美優。柔らかな金髪と
澄んだ瞳。周囲の空気まで温かくなるような
存在感を放っていた。人々の視線は彼女に集まる。
最後の若者は、無口で影のある少女、井筒弓美。
盗賊としての鋭い感覚を隠せないその姿に、
騎士たちも思わず身を引いた。
「成功だ!」王は満面の笑みを浮かべ、手を
大きく振った。重臣たちも拍手を送り、儀式は
順調に進行しているかのように見えた。
しかし、その光の中にもう一人、年配の男がいた。
山波源二、三十五歳。体格は平均的で、特筆する
戦闘能力など微塵も感じられなかった。
王の視線が彼に止まる。王は眉をひそめ、ため息
をつく。「……これは……戦力として厳しいな」
側近たちも黙ってうなずくばかりだった。
召喚された者たちのステータスが表示される。
如月勇気、攻撃力高、耐久力高、魔法力中。
早乙女仁、魔法力高、知力高、戦術適性高。
五十嵐美優、回復魔法力特化、支援力高。
井筒弓美、素早さ高、隠密行動特化。問題なし。
だが、山波源二のステータスは見るに耐えない。
攻撃力低、防御力低、魔法力皆無、体力並。
唯一のスキルは「ルーレット」。しかし戦闘用で
ないため、戦力としてはまったく役に立たなかった。
王は手を上げ、決定を告げる。「山波源二は
勇者としてではなく、…自由行動とする。国庫より
わずかの支給品を与えるのみとする」
わずかの金貨と食料、水だけを手渡され、山波は
玉座の間の外へ追いやられた。胸に悔しさが
こみ上げる。無力さ、無念さ、すべてが渦巻いた。
「な、なんで……?」山波は自分の足元を見つめ
つぶやいた。周囲の若者たちは成功を祝う声を
上げている。自分だけが、まるで不要物のようだ。
玉座の間の外、城壁の影で山波は深呼吸した。
冷たい風が顔を撫でる。目の前には広大な王国の
景色が広がる。追放されても、世界はまだ動いて
いた。
「俺にできることは……ないのか?」拳を握る。
目の奥で小さな光が瞬いた。ルーレット。スキル
名だけは派手だが、戦闘向きではない。しかし……
その時、近くの小川で光る水面に何かが映った。
手元の金貨を数える。食料はわずか。水も限られ
ている。生き延びるために、冒険者として歩むしか
ない。
山波は歩き出した。隣町ブランヴェールの冒険者
ギルドを目指して。弱くても、生き延びてやる。
ルーレットにかけるしかない。生き残るための戦い
が、今、始まったのだ。
街道を歩くうち、山波は小さな魔物の群れと遭遇。
普通なら逃げるところだが、彼の手元でスキルが
うずく。思い切って発動。ルーレットが回り始めた。
出た数字は「1」。経験値吸収能力。
弱い魔物を倒すだけで、短期間で成長する力。
無力と思われた男に、わずかな希望が差した。
山波は小声でつぶやく。「よし……やってやる」
それだけで、心に確かな決意が宿った。
こうして、追放者としての第一歩が踏み出された。
山波源二の、異世界での戦いの幕は開いたばかり
だった。
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