ナツメとトモキの大返済
亞沖青斗
序章
あの日、私と松原トモキは、動物園の地面に飲み込まれた。
その負債を返す日が、いよいよやってきたらしい。自宅が原因不明の火災に遭った中学生のときも、絶対に肌身はなさず持っていた大切なナイフと石。それがいきなり震えだしたら、風呂上がりの就寝前で顔面パックしていようがそれは覚悟も決まる。
おそらく、彼も同じ現象に見舞われていることだろう。この日のために揃えてきた装備を手に、私は一人のアパートから出て愛車に乗り込んだ。五月の半ばであるのに肌寒い夜が、不思議とアクセルペダルをかたくさせる。交差点では、私のような未来とはまず無縁そうな善良な市民たちが、赤信号を守ってそれぞれの帰る場所へ向かっていた。家族が待つ家なり、恋人の家なり、友人のもとなり。
「友人ねえ。ま、恋人ではないけれど」
さて──久しぶりの再会だ。あの偏屈なチビっ子がいったいどんな成長を遂げていることだろうか楽しみではある。ただし、怠惰な肥満体になりさがっていたら、ボコボコにぶん殴ってやる。
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