ヤンデレの女の子に翻弄されるかわいい女の子のはなし/SS

しずり(入院中)

◆ 紗香ちゃんの足になりたい


 手洗いを済ませ、リビングに戻るとわたしは驚くべき光景を目にしました。


「なっ……! 何やってるんですか、蓮音さん」


 ――――。



 わたしと蓮音さんは晴れて恋人……になったかは分からないが、一緒に住むことになった。わたしのアパートのほうが『ドアノブにアイスをひっかけやすい』という訳のわからない、蓮音さんが主張する理由によりアパートを選んだ。


 ――本来はいない人間がいる。いなかった人間がいる。家族が増えた。


 そんなことを気にも留めず、注意していなかったわたしはいつものように日中履いていた靴下をポーンと床に脱ぎ捨てていた。


 そしたら、あんなことになるなんて――



「蓮音さん、何やってるんですか」

「見れば分かるじゃん。紗香ちゃんの足になってるの」


 蓮音さんはわたしが脱ぎ捨てた靴下に自身の腕と手を通し、遊んでいる。


 彼女が変態なのは周知の事実だが、人が外で履いた靴下を腕に通すのは汚いんじゃないだろうか。


「伸びちゃいますって。それに汚いです」

「わたし、けがれた紗香ちゃんのほうが好き」

「わたしが泥だらけになれば蓮音さん好みになれるのですね。ここらへんに泥だらけになれる場所スポット、ありましたっけ」


 わたしは思案する。何も浮かんでこなかった。


「そういう意味じゃないんだよなぁ……」

「どういう意味ですか」


 まだまだ子どもで恋愛経験の少ない紗香には難しすぎる。


「――沢山経験してる紗香ちゃんのほうが好きってコトよ。初心うぶもいいけどね」

「!?」


 わたしは彼女の発言の意味を完全に理解して顔を赤くした。


「この話、やめましょう」


「にゃー」


 返事のつもり?

 かと思うと蓮音さんは猫のポーズをとっている。


「なんの真似ですか?」

「猫の真似」

「はぁ」

「紗香ちゃん、溜息吐くのやめて。フキハラだよ」

「フキハラって何」

「紗香ちゃんって何も知らないんだね、かわいい」


 もう! 普通に質問に答えてよ!


 最近、蓮音さんがわたしに向けて言う『かわいい』の耐性が無くなってきた。言われる回数が増える度に恥ずかしさとドキドキが増していく。わたし、おかしい。


「紗香ちゃんって足細くて白いよね。紗香ちゃんの足になりたいよ」

「蓮音さんの足も細くて白くて綺麗だと思いますけど」

「それ、本気で言ってる?」

「ええ」

「じゃあ、わたしの足舐めてほしいな。綺麗なら、舐めれるよね?」

「……はい?」

「今のは忘れて。そんな顔しないで。真面目に考えないで。舐めないで」


 蓮音さんの足……。んー。

 舐めれなくも…………ない?


「おーい。紗香ちゃんー、戻ってこーい!」

「ご、ごめんなさい。フキハラのこと、考えてました」

「そう」


 わたしは蓮音さんの近くにいると、変な気持ちになるので、自分の部屋に向かいます。


 もう素足すあしのままでいいや。


 靴下は蓮音さんに任せよう。


 リビングのドアを開け、廊下に一歩踏み入れる。


「好きにしていいですよ(その靴下)」

「好きにしていい!?!?」


 何故、そう告げると蓮音さんはじりじりと近づいてくるのでしょう。


 夜が近い、薄暗い廊下で柔らかいが唇に当たりました。


「んっ」


 息ができない。首は絞められてないけど、顔が彼女の手により固定されてて動けない。靴下の臭いが鼻腔をくすぐる。


 何故、靴下は好きにしていいよ、と告げたらキスされる羽目になるのでしょう?


 何か勘違いしてません?


 そしてそのまま壁ドン。しまいには胸を下着の上から触られる――。


「――ちょ、ちょっと待って下さい。蓮音さん」

「なに?」

「なんでこんなこと、してくるんですか」

「紗香ちゃんが『わたしの身体、好きにしていいよ』って言ったんじゃん。身体とは言ってなかったけど、ニュアンスでそう受け取ったの」

「わ、わたしは! って言ったつもりだったんです! 勘違いです、やめて下さい」

「ええーっ!」


 身体と靴下。大きな違いだ……。


 あとで散々謝られたけど、蓮音さんはわたしの靴下を自分のモノにした。

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