通り過ぎたあと

薄明

第1話 水たまり

大雨が降った翌日の朝。
いつも通りかかる場所にとても大きな水たまりが出来ていた。


どうしよう、迂回しようか?
そう考えたわたしの目の前を一匹の猫が通り過ぎた。
猫はそのまま水たまりの方へ駆け抜けて行き─突然消えた。


え?!
慌てて駆け寄ると、そこはもう大きな水たまりのすぐ横だった。
猫はいない。


─水たまりには覗き込むわたしの顔ではなく、『なにか』が映っていた。
引き返そうとしたわたしの脚を『なにか』が掴んで、引っ張った。


「ねえ、さっきまで前を歩いてた人、どこ行ったんだろ?一本道なのに急にいなくなったよね』」「ええ?見間違えじゃない?…遅刻しそうでダッシュしたとか」


「…うーん、そんなことないと思うけど…」


「それよりさあ、今日の帰りに駅前の─」


そこにはもう水たまりはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る