3-6

『問題ないようですね』


「よし、じゃあ出るか」


 ソルーシュの声にナズナは神威との目のリンクを切り離した。錆びた鉄の扉が重苦しい音を立てながら開かれ、眩しい外の光が差し込んでくる。それと同時に新たな冷気が入り込んできた。


「寒っ!」


 外に出てソルーシュが自身の肩を抱きつつマントの留め具をしっかりと留め直した。今日は天気のせいもあってかいつもに増して寒い。白い息を吐きながらナズナも同意するが、彼女はこの澄んだ空気が好きだった。

ナズナが外へ出てきた時、空を飛んでいた神威がナズナの中へと舞い戻ってくる。


「お疲れ様です、神威」


労う主の声に神威はふっと柔らかく目元を緩ませることで返事の代わりとした。

さて、と切り替えるようにヴィルヘルムは従妹に尋ねる。


「地下通路で大体の話は理解したけど、その一つ目の欠片がある灯台の場所は具体的にどこにあるのか分かるかい?」


「ええと…」


風景が映っただけであり、具体的な位置は分からない。答えられないナズナに代わってソルーシュが答えた。


「オレに一つ思い当たる場所がある。とはいえ、ここで呑気に話すよりも街中へ移動した方がいいだろうよ」


裏手とはいえ、誰も見ていない保証はない。ここに留まっていては目立つ。そして何よりも寒い。街の大衆の中に紛れてやり過ごせるだろう。木を隠すなら森、である。

ソルーシュの提案にナズナもヴィルヘルムも異存はない。彼らはソルーシュの案内に従ってノイシュテルンの城下町へと移動した。



 城下町は王宮で大きな騒ぎがあったせいか、いつもより街を巡回している騎士達の姿が多かった。あちらこちらで部隊長の号令を飛ばす声が街の住人達の声に交じって聞こえてくる。

混雑する人の合間を縫って三人はソルーシュがよく利用している酒場へと向かった。


 ソルーシュがよく利用する酒場の名前は“銀の三日月亭”と呼ばれる裏通りに面した隠れ家的名店だ。

人にあまり知られていない場所にあり、席も秘密が守られるよう個室のように区切られていてよく男女の逢引や貴族や商人達の密談にも利用されている。

ソルーシュが先頭を切って中へ入ると、彼の馴染みの女将が出迎えに現れた。


「おやおや、ソルーシュじゃないか。今日は随分可愛らしい子と綺麗な顔の子を連れてるねぇ」


「やあ女将さん。今日も美人だね。後ろのお嬢さんはオレのいい人で、その隣の奴はいつも話してるオレの幼馴染さ。

 いつも席、空いてるかい?」

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