1-6

 ふとソルーシュの視界に珍しい髪色をした青年が遠くを横切っていく姿を捉えた。

瑠璃色のおかっぱ頭をした背の高い青年である。髪から覗いている耳はまるで魚の鱗か妖精の羽根のようだ。

この大陸やソルーシュが生まれた南大陸では見ないような珍しい服装をしている。どこかの国から来た観光者だろうか。

 今回の舞踏会は王族と貴族だけの舞踏会だから、あの青年もそれなりの身分に違いない。ソルーシュは貴族ではないが、ビスマルク公が雇った私的な令嬢の護衛ということで入れるようになっている。

青年はきょろきょろと辺りを見回しながら人ごみの中へと消えていった。


「ソル?」


ナズナの不思議そうな声にソルは意識を再び彼女に戻した。


「は!すみません、ナズナ姫!」


「いいえ。その、どこか体調とか悪いのですか?」


心配そうに見上げてくるナズナの両頬に優しく手を添えて、至近距離で彼女を見つめつつソルーシュはにっこりと笑う。


「心配して下さり、ありがとうございます。至って健康ですよ、ナズナ姫。

 しかししいて言うなら、貴方への想いで動悸、息切れ、眩暈がげふぅっ!!」


『ナズナに軽々しく近づくな、この変態が』


 冷たい男の声によってソルーシュの声が遮られ、彼女の中から見えない手がソルーシュとナズナを引き離す。せっかくの口説きが台無しである。見えない邪魔者にソルーシュが悔しそうに歯ぎしりする。


「エリゴス…いいところで邪魔しやがって…」


『貴様の今日の任務はナズナの護衛であって、口説くことではないぞ。

 俺がいる限り、それ以上のことはさせん』


ふんと鼻で笑うと同時にナズナの中から竜のような翼を生やした男性が現れる。銀髪を靡かせ、赤紫の瞳が鋭くソルーシュを睨み付けている。

 彼の名はエリゴス。レガシリアとは別の世界にある“魔界”を統べる王だ。

エリゴスも神威と同じくナズナと契約を交わして守護する者である。

ただ、彼は一応王という肩書を持っているため神威ほど頻繁に出て来れない。そして彼の力が強大過ぎるため、未だナズナは彼の真価を発揮させたことはなかった。

 それはともかく、先程のやり取りから分かるようにソルーシュとエリゴスは初対面の頃から馬が合わず、顔を合わせる度に小競り合いをしている。

これが始まると誰かが間に入るまでずっとやっているのだ。

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