通告:精霊監査委員会より監察官を派遣します
藤崎美羽
白い塔
第1話 普通の高校生、異世界で監察官になる
キキ─ッ!!
けたたましい急ブレーキの音、近づいてくる二つのヘッドライトの明かり
ゆっくりと流れる世界で思った。
「あっ、死んだ」
俺、中山明はごく普通の高校2年生だ。
偏差値の可もなく不可もない高校に惰性で通いながら、特別に陽キャでも陰キャでもない友達と付き合って、可もなく不可もない高校生ライフを楽しんでいた。
そう、『いた』のだ。つい数秒前までは....
高校の帰り道、コンビニに寄り道しようとしたのが悪かったのだ。
青信号で横断歩道を歩いていると一台のトラックが突っ込んできた。
焦って前にも後ろにも動けない俺。焦って右手のスマホを握りしめるだけの運転手。
そして起こる偶然かつ必然の結末.....
あぁ、思ったより人生短かったな.....
どうか地獄にだけは行きませんように!
「安心しろお前の行く先は地獄ではない」
えっ!うそ!じゃあ天国⁉
「天国でもない」
.......は?天国でも地獄でもなかったらどこに.....
「お前がこれから行くのはここ、地球とは異なる世界『ユーロパロス』だ」
ユーロパロス?異世界?どういうことだ?
「つまりだな....えーっと....ええい!目を開けんか!テレパシーは疲れるのだ!」
えっと、これは、本当にどういうことだ?
....まぁ神様(推定)の言う通り目を開けてみるか
ゆっくりと瞼を開けてみる。人生(すでに終了)においてこんなにも目を開ける行為に対して神経を使ったことはないと思われる。
最初に映るのは白。
揺蕩うような白の中に俺と古代ローマの彫刻のような壮年の男性だけが浮かんでいる。
この人が....神..様
「違う、儂は神ではない。アキラ・ナカヤマよ、最初から説明しよう」
「お、お願いします」
「まず、儂はユーロパロスの大精霊だ」
「大精霊?」
「いいから聞け。ユーロパロスは精霊が根強い世界だ。火、水、地、風、光と闇の主に6種類の属性にまつわる土地と国があり、人間と精霊が手を取り合って生きている。人間たちは属性の代表である大精霊と契約を交わしその土地の恩恵を得る、精霊たちは遊び相手も精霊力もふえてラッキーのWinーWinの関係なのだ」
「それじゃあ貴方は何の大精霊なのですか」
「儂は無属性の大精霊だ」
「はっ、無? えっ、無?でも今属性は6つだって」
「基本的にはの話だ。無属性は特例中の特例ですべての属性の特徴を持ちながらもどの属性にも入らないという複雑なものだ。イメージは光のプリズムに近い。」
「は、はぁ」
「この特徴により儂はユーロパロスに土地を持たず、ユーロパロス全体の監視をするという役割があるのだ。交通事故で死亡し、本来輪廻の輪に帰っていくはずだったお前がここにいる理由もそこにある」
「どういうことですか?」
「おかしいのだ。ここ数年で明らかに各国の力に差が生じている。この世界はつり合いやめぐり逢いがとても大事だ。どこかが崩れれば巡り巡って全体が滅びてしまう。そこでお前だ」
「お、俺⁉」
「そうだ。本来異界のものを入れるなどあってはならない話だがこうなってしまっては仕方がない。毒をもって毒を制す。お前が各国を観察し世界の歪みを直せ」
「無理です!無理ですよ!俺は何の特技も持たない高校生でとてもじゃないができない!」
「悪いがお前に拒否権はない」
「あっ、ほら、なんかチートスキルとかください!こう『普通の高校生が異世界で無双!』みたいな」
「すまないがそれもできない」
「どっ、どうしてですか?」
「先ほども言ったがお前はこの世界にとって劇物だ。これ以上刺激を与えることはできないし、そもそも儂にはそんなたいそうなことはできない」
「そんなっ...勝手に呼び出しといて、それにできないって」
「私は精霊だ。お前たち地球のものが信仰している神?ではない」
「いや、ちょっとまって」
「すでに精霊協会には伝えておる。無の大精霊—ラバントの名においてアキラ・ナカヤマを監察官に任命する」
目の前の精霊、えーっとラバント?が言い終わると同時に白の世界が回っていく。
おい嘘だろ、ほんとにこのまま放り出されるのかよ⁉
おかしいだろ、普通は『神様が現れてチートスキルとかバンバンくれて異世界無双で人生イージーモード!』ってやつだろ?なんだよできないって...
抗議の声も必死の抵抗もミルク色の渦に飲まれていく。
「あっ!すまん言い忘れていのだが、とりあえずお試しということで一か月で結果が出なかったら輪廻の輪に返すからな」
はぁ?それってつまり、一か月で価値を示さないと殺すってことか?
クソっ、まじで恨んでやるからなラバント!覚えていろよ!
あぁ、もうだめだ、意識..が......
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