捕まりやすいお嬢様、メイドが命をかけてお守りします

神木わるふ

第1話 捕まりやすいお嬢様とメイド

郊外の薄暗い倉庫の中。

長年の間誰も立ち入っていないのか、埃を被った段ボールの箱が棚に積まれたまま放置されている。

そんな倉庫に閉じ込められた、高校の制服を来た少女と、同年代のメイド服を着た少女たちの目線の先には5人の人拐いがいた。制服を着た少女の手は微かに震えているが、その隣にいるメイドは周りの状況を静に眺める。

そして一番先頭にいる短髪の男が口を開く。


「あの社長の娘だけ拐うつもりだったが…。よくわかんねー女も連れてきちまったな。」


「なぁ、アニキ。コイツら紐で結ばないでいいんですか?」


肩まで髪の伸びた男が何処か油断した口調で言う。


どうやら二人は少女だから抵抗する力もないだろう、ということで手を結ばれるなどという拘束はされていないようだ。


「てか、アニキ。暗いっすよここ。電気つけていいですか?」


そうして、1人の長髪の男が電気をつけに行くために背中を見せた瞬間、メイドは隠し持つ銀色に光るベレッタM9を構えた。そして部屋中に銃声が鳴り響く。床に薬莢が落ちるのと同時に倉庫中に火薬の匂いが充満する。

こちらを向いていた短髪の男が倒れ、それと同時にメイドの異常さに気がついた残り4人の人拐いたちは何が起きたか数秒後に気がつく。


「アニキ?!お、お前!何しやがる…?!」

「アニキ?!大丈夫か?!アニキ!」


他の人拐いたちの言葉などメイドの耳には入らずに、『残り4人』メイドの頭の中にはその言葉しかなかった。


「大丈夫。すぐに君たちも同じ場所に送ってあげるから」


その言葉を聞いた人拐いの1人は短髪の男がメイドに眉間を撃ち抜かれた事に気がついた。


「この野郎…!アニキを殺しやがって!」


そうして男はナイフを投げ捨て、懐から隠し持つトカレフを取り出した。


「地獄へ行け!この野郎!」


メイドに照準を合わせ引き金を引いたが、メイドは身を隠すことなく男の方を眺め続けたが、銃声が鳴り響くことはなく、倉庫に数秒の沈黙のが流れる。


「チャンバーに弾も入ってないのに。

──三流ですね」


メイドにそう言われた男の顔が即座に青ざめていく。


「トカレフにはセーフティがないのでキャリーするには危険。なので安全のためにチャンバーに弾を送らないですよね。今の貴方はスライドを引いてチャンバーに初弾を装填していない。つまり今引き金を引いたところで何も起こらない。」


「クッソ…!」


男が初弾を装填しようとスライドに手をかけた瞬間、メイドはベレッタの銃口を男に向け引き金を引いた。薬莢の落ちる音が倉庫に鳴り響く。


「さてと、残りは…」


すると、三名の人拐いの生き残り達はナイフを持ち、倉庫の棚に隠れながらメイドを攻撃するタイミングを見計らっている。


「何もせずに武器を置いて出てくれば許しますので。早く出てきてください。」


「……ふ、ふざけるな…!」


一人の男の怯えた声が返ってくる。


「お…お前みたいな人殺しの言うことなんて誰が信じるか!!アニキたちを…!」


そう叫んだ男が限界を迎えたのか、メイドに向かって近づきナイフを振り上げ、男が踏み込んだ、その瞬間


「……なっ!」


メイドの動きは一瞬だった。

振り上げられたナイフを掴み取り、その勢いのまま男の腕をひねる。

そして倒した男を即座に立たせ、奪ったナイフの刃を男の喉元に近づけ、男を人質にした。


「もう勝敗はついたでしょう?降参してください。」


そうメイドが言うが、2人の人拐い達はメイドと睨み合いを続ける。


「今から3秒カウントしましょう。3秒以内に出て来なければ…まぁ、わかるでしょう?」


すると人質の男がわめき始める。


「お、お前ら!俺はこんな奴に殺されて死にたくない!助けてくれ…!仲間だよな?!」


そんな叫び声も虚しく、2人の人拐いたちが出てくる動きはない。


「3…」


隠れる2人の男たちは互いに目を合わせた後に、こちらを見る


「2…」


まるで、死神が目の前にいるかのように、

人質の男の呼吸の震えがさらに酷くなる。


「1…」


男たちは目を合わせ、隠れていた場所から出てくる。


「投降しますか?」


すると男の一人がナイフを地面に投げ捨て、口を開く。


「あぁ、俺らの負けだ。許してくれ。」


「では、もう一人の方もナイフを置いて、両手を上げながらこちらに近づいて来てください。」


そうして戦闘が終わった。制服の少女は身を隠していた場所から周りを見渡すかのように顔を出し、安堵の顔をする。


───だが、その瞬間


「甘いんだよバカ野郎が!」


降参した男の一人が懐からトカレフを出した。男の表情は笑みを浮かべ、メイドは直感的に危険を感じた。


──この男は味方がどうなろうと構わない。


「や、やめろ!おい。撃つんじゃねぇ!俺に当たるかもしれねぇだろ!」


人質の男の声は虚しく届かずに、男は人質とメイドに向かって引き金を引いた。

メイドは即座に人質の男の後ろに移動し、銃弾は男の身体に命中する。


男の必死の叫びは虚しく、銃声により断ち切られ、乾いた沈黙が再び倉庫を満たした。

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