勇者バルバトス
【世界共通憲法第一条】
勇者とは……
勇者とは魔王を打ち倒すものである
魔王を打ち倒すのは全世界の人類が悲願である
それを唯一叶える事のできる勇者
すなわち勇者は絶対の存在
勇者はどの国の王よりも権力を持ち
富は無限である
全てのものは勇者に差し出されなくてはならない
無論、勇者に逆らうもの極刑はとする
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ははは!本当に、世の中ちょろいぜ」
勇者バルバトスは今日も魔王軍を打ち倒し、勝利の美酒に酔いしれていた。
もちろん、両脇にはこの街随一の美女をはべらしている。
一本100万ゼニーもするワインを豪快に飲み干し、バルバトスは笑う。
「ああ、愉快だ。あの魔王軍の苦汁に満ちた顔、命乞い!すべてがいい酒の肴だ!」
そんな上機嫌のバルバトスだったが、急にピリリと右の頬に痛みを感じた。
「くそ!」
バルバトスは思わず持っていた。ワイングラスを床に叩きつけた。
女たちは悲鳴をあげたが、バルバトスの顔が憤怒に満ちているのに気がつき、慌てて見ないようにした。
「忌々しい。今まで魔王軍のどんな猛攻にも傷一つ付けられなかった。私の頬を殴るなど」
8年前のことであったが、その記憶は今でも鮮明に覚えていた。
その日、バルバトスは伝説の聖剣バハムートを手に入れたばかりだった。
当たり前のようにバルバトスは試し切りをしようとした。
もちろん、鉄や木なんかはお構いなしにサクリサクリと斬っていった。
その辺にある民家なんかも簡単に斬れた。その辺でバルバトスの興が乗ってしまった。
いい気分のバルバトスは次に、何か生き物を斬ろうと思った。
別に理由はなかった。ただ、そこに逃げ遅れた少女がいた。それだけであった。
「これも綺麗に斬れるかな?」
「ひっ」
怯えた女の子はバルバトスを見てすぐに逃げようとしたが、もちろん『世界最強の勇者』から逃れることはできなかった。
「ああ逃げたね。知らないのか勇者法を。勇者に逆らえば死刑なんだよ。まあお前は逆らわなくても死ぬんだけどね」
そう言ってバルバトスが笑いながら剣を振り下ろした。その時であった。
いきなり大柄な男がバルバトストと少女の間に割って入ってきた。
バルバトスは男の右腕を斬りつけた。
その瞬間、今までは豆腐のように斬れていたはずの。聖剣バハムートから、確かな手応えを感じた。
まるで硬い金属と金属がぶつかり合うような激しい音と火花が散った。
バルバトスはムキになって力を入れると、男の腕はすっぱりと斬り落ちた。
「なんだ、伝説の剣なのに人間を切るのにこんなに力がいるなんて。本当にこいつは伝説の剣なのか?ナマクラじゃないのか?」
そう言って勇者はバハムートをひっくり返したり、よく観察した。
その間に、少女は逃げてしまったようだ。荒い息をした腕を斬られた男だけが勇者バルバトスの前に立っていた。
「なんだ。お前のせいで試し切りが逃げてしまったではないか。まぁお前でもいい……」
と言った瞬間、信じられない事が起きた。
勇者の眼前に男の左拳が伸びていたのだ。
「えっ?」
どんな魔王軍の猛攻も、蝶の様にかわしていたバルバトスが、その時どういうわけか、一切反応できなかった。
男に殴られてから記憶が無い。なんと、暫く意識を失っていたのだ。
病院のベッドで目を覚ましたのは、バルバトスにとって初めての経験であった。
男に殴られた屈辱を思い出し、勇者はわなわなと震えた。
「ーーけっ、酔いが冷めちまったぜ。まあ、いい。やつは禁錮400年で一生檻の中だ。一生もがき苦しめばいい!」
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