ゲンキンなペンギン

橙こあら

ゲンキンなペンギン

 昼間に外出していると、こんな会話が聞こえてきた。


「最近の天気予報って、よく外れなーい? 全然アテにならないときが増えたよ~」

「そうそう。急に雨が降ったりしてさ! その日と翌日で、天気予報がガラッと変わっているとかもあるし」

「だよねー! これまで付いていなかった雨マークが次の日、急に付いちゃったとか……」

「寒いって聞いていたのに、そんな寒くなくて拍子抜けしたこともあったよ……」

「ってか毎年、夏が暑くなっていて超しんどい」

「きちんと冬は寒いけど、これも徐々に変わっていっちゃうのかなぁ?」

「これも地球温暖化の影響……?」

「あーあ! 異常気象か……。怖いよ~」


 ふん……。

 貴様ら、自業自得ではないか。

 そうやって嘆く前に、どうにかすれば良かったんだろうが。

 愚痴をこぼす人間たちに呆れながら、僕は下宿先へ向かって歩いた。




「人間とは、実に愚かな生き物だよ」

「あっそーですか。そう言っているあんたは今、その人間と共に暮らしているんだよ」


 私は現在ペンギンと共に暮らしている。近年ペンギンは進化しているのだ。「人鳥」と書いて「ペンギン」と読むことは知っていたが、まさかここまで発展するとは思ってもいなかった。今では、人間社会へ進出してきたペンギンも存在している。


「身から出た錆って、こういうことを言うんだなぁって……奴らの会話を聞いて思ったよ」


 さっきから人間をバカにしている、生意気なペンギン。私の家を下宿先として、人間社会の勉強をしに来ている。


「我々ペンギンが、こうして人間になるしかなくなったのは……地球温暖化が原因でもあるというのに」


 自分たちの住む場所がなくなることを恐れたペンギンたちは、自ら強くなることを選んだらしい。だから、こうして人間社会へ進出することを決心したようだ。こいつの言葉には確かにトゲがある。しかし気持ちは分かってやりたい。言葉を覚えたり、体を鍛えたり、こうして人間社会について勉強したり……。ペンギンたちは生きるために、どれだけ頑張ってきたのだろう。つらい思いをした者は、いっぱいいると思う……こいつ含めて。


「じゃあ、あんたは寿司いらないのね」

「それとこれとは話が別だ」


 今日の夕食は、私が作った寿司だ。お稲荷さんと巻き寿司。ほぼ助六寿司。上出来だ。目の前に出された寿司を、さっきまで毒を吐いていたペンギンが楽しそうに見ている。


「あんたが大好きな寿司を考えたのは、あんたが嫌っている人間だよ」

「寿司は寿司。人間は人間だ」

「ゲンキンな奴……。そんなに人間、恨むなよ」

「ちなみに僕は、あなたのことは決して嫌いじゃない」

「……そりゃどーも……」


 食べるときは素直なんだから。

 おまけに、ツンデレしやがって。

 こいつみたいに、人間を好きにはなれないが、人間が生み出した文化を好むペンギンは多い。


「いただきまーす」


 私は同居中の憎めない奴と手を合わせて挨拶し、お手製の寿司を食べた。


「うまい! やっぱり寿司は良いなぁ!」

「喜んでもらえて良かったよ」

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