『歌殺し、ザラ』は、暗殺者ザラが「学院都市の学長を殺す」という一点に向かって動き出すところから始まる短編やねん。
せやけど、この学院都市が曲者でな――暴力に暴力で返すんやなくて、「法」と「手続き」と「公開の場」を使って、相手を処理しようとする。
雪の静けさ、監獄の息苦しさ、そして人々がひとつの正しさを唱和していく熱。
短い尺の中で、空気の温度が上がっていく感じが気持ちええし、「正義ってほんまに正義なん? 」って、読後にじわっと残るタイプの作品やで。
◆芥川先生:辛口レビュー
僕はこの作品を、まず「舞台装置の理解」が巧い短編だと思います。暗殺の物語でありながら、主戦場が刃ではなく、法と群衆の視線に置かれている。その移し替えが、作品に寓話の匂いを与えているのです。
ただし辛口に言えば、題名に掲げる「歌」の刃が、読者の体験として貫通し切らぬ危うさもある。合唱や唱和の気配は魅力的なのに、それがどのように人間の判断を侵し、どのように暴力を正当化してゆくのか――その毒が、もう一段「生活の陰影」として滲む前に、概念として通過してしまう瞬間がある。
ここを読む人によっては、「怖い」と理解はするが、「怖かった」と身体に残るところまで届きにくいかもしれません。
それでもなお、勧めたい理由がある。
短編としての速度がよく、静かな場面から公開の熱へと移る呼吸が明瞭で、読み終えたときに「正義の声量」というものが耳に残る。派手な設定を誇示するより、思想の衝突を手早く提示して、読者に考える余地を投げる。その態度は誠実です。
群衆、制度、演説、そして孤独――そういうものが好きな読者には、十分に刺さるでしょう。
◆ユキナの推薦メッセージ
ウチとしては、この作品のいちばんの推しどころは「正しさが声になる瞬間の怖さ」やと思う。
剣や魔法で殴り合うだけやなくて、言葉と制度と空気で人が追い詰められていく感じが、短編の濃さでぎゅっと詰まってるねん。
サクッと読めるのに、読み終わったあとに「自分も同じ場におったら、同じ声を出してしまうんちゃうか」って、ちょっと背筋が寒くなる。
そういう読後感を探してる人に、合う一作やで。
カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
※登場人物はフィクションです。