押し入れを開けないでください。美少女がいます

歌舞伎ねこ

第1話

 やりたいことがあった。

 そのはずだった。

 だからゲームの専門学校に入ってそれを学んだ。

 だけど行きたかった会社からはことごとく内定がでなくて、なんか色々イヤになって今の会社を選んだ。

 学んできたことは一ミリも活かせないけど生活はできるだけの給料は出る。

 なにより専門学校時代の学費を払わないといけない。

 四年で四百万。バイトもしてたのにこれだけの奨学金を借りていた。

 金利もつくから返す額は更に大きくなる。

 社会人になって最初の内は案外燃えていた。

 仕事が終わるとアパートに帰って家でゲームを作る。できたらサイトに登録して、そしてまた新しい作品に取りかかった。

 これをひたすら繰り返していた。

 でも三年くらい経つとだんだんやらなくなっていった。

 こっそりと持っていたインディーズで一発当てて有名人。あるいは人気が出て僕を落とした会社から声がかかる。

 なんて夢は購入者数がなんとか百人という現実の前で淡くも崩れ去った。

 売れたらお金にはなるけど、単価は安いし、その割に時間はバカみたいにかかるからとてもじゃないけど儲からない。

 むしろ機材やソフト代を考えれば赤字だ。

 なによりあれだけあったはずの情熱は才能がなかったという事実に打ちのめされ、随分小さくなってしまった。

 加えて仕事が忙しく、帰ったら寝るような生活が続けばできるものもできなくなる。

 結局今はアパートに帰っても動画を見たり、アニメを見たりするくらいだった。

 あれだけ好きだったゲームもほとんどしなくなっている。買ってはいるけど手が伸びない。 仕事で疲れているからゲームで疲れるのがイヤになった。

 こうやって無気力なアラサーがこの世に誕生してしまった。

 今日もなんとか仕事を終えて、電車に乗り、スーパーに寄って半額になった弁当とお惣菜を買い、とぼとぼとアパートまで歩いて帰る。

 ここ数年ひたすらこれを繰り返している。そしておそらくこれから先もそうなんだろう。

 正直会社を辞めたい。

 昔は成長していた感じがあったけど、今はもうただの作業を繰り返しているだけだ。

 給料も上がらないし、ボーナスも多くない。未来がない中小企業の歯車をしていた。

 なにもしてないから来月のボーナスで奨学金はなんとか返せそうなところまで来たけど、そうなったらいよいよ働く意味が分からなかった。

「…………はぁ」

 最近意味もなく溜息が出る。そしてそのたびに思った。

 僕はなんのために生きてるんだろう?

 そんな答えの出ない問いを浮かべながらアパート近くの角を曲がると、そこには大きなダンボールが置いてあり、そしてその中では細身で小柄で髪の長い美少女が横たわっていた。

 大きめのダルっとしたTシャツからはショートパンツが微かに見え、細くて白い足が伸びている。

「………………は?」

 なんだこれ? 幻覚? 仕事で疲れすぎるとこんなのを見るようになるのか? もしかしてかなりまずいんじゃ。そうだ。明日病院にでも行――

「……ん? あれ? 寝ちゃった……」

 半ばパニックになっていると女の子は目を開け、そして重そうな瞼をどうにか開けながら、上半身を起こした。

 そして女の子は不思議そうに僕を見上げるとどこかのんびりと微笑んだ。

「お兄さんがわたしを拾ってくれるの?」

「…………え? 拾う?」

 意味が分からずにいると女の子が入っていたダンボールにはこう書いてあった。

『誰かひろってください』

 ついていけずにいる僕へ女の子はへらっと微笑んだ。

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