そこの絵

琉之介

僕が君を見る

 まるで決まった場所でいつも寝ている猫みたいだね。僕が家で作業してる時、そこに来てくれる。何も言ってないのに僕から見えるところへ。今日は何を描くの。ケーキか。そんな鷲掴みするの。手汚れちゃうよ。器用に右手で描いて。の絵はすごいんだから。

 こないだの個展も見に行ったよ。知ってるか。一週間毎日来たからね。絵じゃなくて、に会いにだけど。

「昨日もいらしてましたよね?」

 が話しかけてくれたのは嬉しかったな。まさか二日目にして覚えてくれてるなんて。絵のことはあんまり詳しくないけど、が一生懸命な目で語ってくれた。今話しかけてもあんなに熱く話せないだろうな。

 あー。そうだよね。日光が邪魔だったよね。また見せてね、の絵。


 毎日見ちゃうなこの絵。が描いた、の手。直接見るよりもいい。僕が見る、の手じゃなくて、が見る、の手。でも結局この絵は僕が見てるんだよな。の純度が薄れてく、この汚い目で見てるんだよ。いつか、の視点を見てみたいな。どう映ってるんだろ。淡くて、空気が青白くて、なんというか。ああ素敵だ。

 あれ?どうしてか。ユイちゃんのこと考えてる時、ユイちゃんの名前浮かんでこないな。顔が出てくるからか?僕は脳で文字の「ユイちゃん」じゃなくて、の顔を思い浮かべてるからか?発見だ。まあでも脳内でも名前呼んでたら気持ち悪いし。変態じゃんそんなの。もうほぼオナニーじゃん。よかった変態じゃなくて。


 うわっ。通知って嫌いだ。対話も電話も嫌だから、メッセージのやり取りが楽なのに。それに音っていう圧があったら意味がない。そうかい、シフト出せってかい。お金がない。そしたら鬱になる。そしたら働けない。そしたらお金がない。これが陰と陽の交わり?無限の回転エネルギー?そんなの目が回ってしまうよ。回るのはお金だけでいいんだよ。

 うぜー。急にスマホすらウザくなってきた。この社会は電波で成り立ってるんだ。電波でやり取りして、電波で物が買えて、電波でカジノする連中もいる。スマホが無ければ社会から逃げれるのに。だって僕は自分の部屋から、の部屋を見ているだけで幸せなのに。外界と繋がる必要なんてない。考えるほどスマホって異常に思えてきた。数日返信がないだけで死んだかと思われるんでしょ。死体を見てもないのに。社会全体がスマホ依存症だ。お金もか!お金にも依存してる。依存ばっかだなー。僕が何にも依存せずにその辺を走り出したらびっくりされるんだろうな。警察に止められて。

「何してるんですか?」

「走っています。あなたは?」

「はい?」

「あ、すみません。警察は警察をしてるんですもんね。」

 これどうなるのかな。これで連行されたらたまったもんじゃねーぞ。

 飯食って寝よ。

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