CAF invoice (予知)

>>



 小さな頃から予知は出来た。

毎日じゃなかったし、それが予知なのかさえわからないくらい

些細な小さな未来しか見えない事が多かったけれど。




 例えばまだ5歳にも満たない頃。


保育園に居た俺は当時流行っていた

『文字で書いてある物を、写真から見つける絵本』を友達と読んでいた。

もっとも、俺は文字を読まずに絵ばかり追っていた。


読み書きは既に知っていたのだが、そうでは無くて、

『正解するのが怖かったから』

本とか映像とか。それも結局のところ、先を知らぬ者にとっては未来なのだ。




他の子に「一緒に探さない?」と言われたので、その場に居た4人ほどで

絵本を囲んだ。


「知らない本だから、大丈夫」と思いながら

それでもなるべく写真を見なかった。それでいいと思った。


だけど……


「探すのって、たとえばこういうの? それとも、こういう」

と絵だけで指差してふざけようとしたところ、

空気が変わる。

「こわ……」

「カンニングしてたでしょ!」

「やっぱり、読んだ事あったんじゃん」

「やっぱりお前は読むな、気持ち悪い」

一番リーダー格だった子が、本を撤収して「行こ」と他の子達を引き連れて行く。俺は友達が何をいやがったかわからず、あとで文字を読み直した。


全く読んでいなかったのに、これを見つけてねと挙げられたリストは全て、

俺が適当に指差していたものだった。



周りに指を指され、チートだと非難される。


「ち、ちが……わざとじゃ」


自分がわからなくなった。






 学校に行くようになると、試験があったので、

そこでいろいろと試してみた。

わかったのは都合よくいつも何でも視える訳でも無い事だけ。

出来ることは出来たし、知らない事は知らなかった。


テストが常に満点だったとかそういう訳でも無く、

かといって全くの無知とも言えない、半端な順位、結果。

上位になったり、真ん中になったりとただ試すだけでは別に安定しなかった。


まぁ、今思うと、勉強は未来そのものではなく、未来を選択するのに

必要になる要素なのだろう。




病院に行ってみたけれど特に検査に異常も見られないから、大体まっすぐ帰宅することになっていた。


 やる前からなんとなくわかったり、なんとなく出来てしまうことがあるたびに、周りが言う、天才とか秀才というやつを演じた。

「その方が、ちょうどよく褒められながら、ちょうどよく他人と距離を保てる」


承認欲求とかそんなんじゃない。

普通だと思って近づかれる度に素が出て傷つく。

だから、少し異常な方が良いのだ。











だけど、あの朝。

「色ちゃん、あんたさー」

「うん」


 ピンクの携帯を操作したり、リップのつき具合を確認したりしながら、

彼女は言った。

「そういう、キスとかはするのよね」

「かいせは、俺みたいなものだから」

「なにその理論」


……。

呆れたように、彼女は俺を見る。

「それって、もう恋人って事じゃん」

そうなのだろうか。即答出来なかった。

きっとそれで良い筈なのに。


普通の自分、異常な自分。

彼はどちらを愛してくれるのだろう?

皆が手放せと迫った、否定を強要して来た未来が、俺にあるとしたら。

それとも俺は普通になりたいのだろうか。

どちらかが欠けても、きっと俺は精神を保てない。


「……あれ、色ちゃん?」


そう言えば、聞いた事が無かった。


「界瀬は俺の、何が好きなんだろう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る