本文

――お前は狂い咲きの彼岸花の元に生まれた。真っ赤に咲き誇る、赤い、血染めの大地の元で生を授かった。だからお前の人生は何処かおかしい。普通とは違う。あの彼岸花のように。

これが良母であり、毒母でもある母の言葉であった。


私の性格は誰が何と言おうとも気まぐれである。何かに夢中になっては飽き、熱を燃やしては冷め、という言動を容赦なく繰り返す。そのせいか、のめり込んだ趣味も数知れず。

ゲーム、グッズ集め、雑貨屋巡り、カフェ巡り、家庭菜園、巡礼、メイク、執筆、そして読書、本屋巡り。これ以外にもあった気がするが、今は思い出せない。私が私である事を忘れさくれさえすればいい良いので、何だって良かった。

今日も触発された本を一冊購入し、自宅に帰って頁を捲る。電子書籍のアプリは電子端末に入っているが、どうにも自分の性分と合わず、結局は書店で本を購入してしまう。あの厚みが、頁を捲る感触が、指で弄ぶ感触が、きっと何処かで重要項目として列挙されているに違いない。

しかしそうしていると、何処かやましい気持ちになるである。心臓が疼く様な、腹の真下が痒くなる様な。兎にも角にも、セクシャルな気持ちになる。そうしてその熱を収めたくて、数頁事に本を置き、端末を弄り、水を飲む。

別にそう言った性描写のある本ではない。もしかしたら後々登場するのかも知れないが、今は一切出てこない。ただ淡々と緻密な文章が延々と続くばかりである。それでも何故か。

――熱い。

――熱い。

――熱い。

私の中の数多の人格達が、口を揃えて言った。どれだけ数多の人格がこの身に宿ろうとも、体は一つである。つまり外界刺激、内界刺激問わず其方側に引っ張られる。そうすると、脳を、内臓を引っ掻き回される様な悦楽が欲しくて仕方がなくなる。浸食されて、飲まれて、抗う事が出来なくなる気がする。

「あのさ、瑠衣たん」

舌根が乾く。

「本を読んでると、えっちな気持ちにならない?」

同居人は何も答えなかった。ただ眉を歪に歪めて、此方を睨むばかりであった。

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