亡父と珈琲

なかむら恵美

第1話

亡き人との、最後の別れ。

棺の中に、何を入れるかは重要である。身近かであった人が、どれだけ故人を分かっているかの指針となるし、故人を偲ぶ手掛かりを求めるからだ。

母の時にも、父の時にも、一応はわたしが決め妹達に承諾を得た。

母の時には苦労した。

メロンパンが好物だったが、日持ちするモノではない。なので当日、大急ぎで買った。ちょいとお高めである。

父には、ピンと来るものがあった。

珈琲である。病を得てからずっとNG。

1ヶ月ぐらい入院しては、1ヶ月半ぐらい自宅療養の繰り返しであったが、「飲みたい」。何度も繰り返す。

仕方なくわたしが、いつもの3倍ぐらいに薄めたインスタントを作ると「不味い」。

素直な感想を述べていた。

だから奮発して、レギュラーコーヒー。

1袋、何パック入りであったか?インスタントのレギュラーコーヒーと、お茶請けにビスケット。ギンビスのアスパラビスケットを横に入れた。亡父の好物だ。


先に逝った母と落ちあい、あのお茶請けセットを楽しんだだろうか?


珈琲とアイスクリームにチョコ、ビスケット等。甘いモノに、目がなかった亡父。

その昔、小学生の頃。

初めてアイスを食べた時、「こんなおいしいモノ、あったのか!」と感動すら覚えたとか。亡父が甘党となった原点だ。

以来、成人し。

会社に勤め、家庭を持ち、親となって、それなりに社会的地位を築いても、甘党。

昭和15年生まれ、東北出身が背景なので、余計であったかも知れない。


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亡父と珈琲 なかむら恵美 @003025

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