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輸送機に収容されたコンテナ車を降り、ヒルダは輸送機の操縦室に移動した。
次はメジスラナクアだ。メジスラナクアを飛行させるには、係留されているドックの発着ゲートを開かなければならない。ゲートの開閉はドックの制御室、あるいはメジスラナクアから可能だ。
制御室のシステムはもちろん、メジスラナクアにも短時間に外部からの侵入は困難だ。
ヒルダはメジスラナクア自体が合図を受け取る方法を考えた。それであれば飛行させるタイミングで侵入する必要がない。事前に侵入して設定さえ済ませれば、任意のタイミングで飛行させることができる。
メジスラナクアは探査船なのでセンサー類が豊富だ。時限式にセンサーを起動させれば、合図を拾うことが可能だろうとヒルダは考えた。合図は特定パターンの超音波とした。ドックの建屋はシールドに覆われているため電磁波は使えない。建屋を透過可能なものとして超音波を選んだ。発生する波形は建屋による減衰を計算して設定した。あらかじめ設置しておいた設備から合図となる超音波を発生させる。発生元を特定されてもそこからすぐにはヒルダに辿り着かない。
ヒルダは合図を出力する設備に回線を接続した。指示を出すと合図が出力される。
あとは待つだけだ。メジスラナクアは設定した軌道で飛行する。輸送機がそれを追尾する。首都の上空を旋回するので、輸送機を収容中に攻撃される可能性は低い。もっとも、今はまだ航空機も発進していない。
戦闘機くらいは出動するだろうとヒルダは予測していた。攻撃はしなくとも威嚇はできる。戦艦については予測できない。無人戦闘艦であれば、戦闘機同様に威嚇のために出動する可能性はある。
いずれにしても、首都上空にいる限り大掛かりな攻撃はないと予測している。問題は大気圏を離脱してからだ。地上に被害が及ばなければ攻撃は充分にありうる。それをどう回避するかが問題だ。メジスラナクアに武器は搭載されていない。つまり応戦することはできない。逃げるしかないということだ。
いや、正確には一つだけ策がある。ヒルダもセギオラと同じように、電場と磁場を操る能力を持っている。ただし、宇宙空間でその能力を使ったことがない。また、能力を使うためには接近する必要がある。接近すれば攻撃を受ける可能性が高くなる。能力を使うのは最後の手段になるだろうとヒルダは考えていた。
(少しでも早く大気圏を離脱しなければならない)
そのためには早くメジスラナクアと合流する必要があるが、予定している時間より早めることはできないだろう。いかにタイムロスをなくすことが重要だ。今のところ戦闘機も発進していない。発進すれば確実に妨害されるだろう。しかし、ヒルダが戦闘機の発進を妨害するのは不可能だ。
メジスラナクアと輸送機の合流までは自動操縦がプログラムされている。余程のことがない限りヒルダが介入する余地はない。
(あの爆発はなんだったのだろうか?)
ヒルダは第三ラボの爆発を振り返った。ハンヌ本人も否定していたが、ハンヌが関係しているとは考えにくい。ヒルダの計画にはほとんど影響がないように思える。少なくとも今のところは。
(この先に影響があるだろうか?)
直接メジスラナクアに影響が及ぶとは考えられない。
では、間接的にはどうか。
爆発により警戒体制は広がる。軍の出動もあるかもしれない。メジスラナクアが飛行してから警戒体制を整えるよりは早い。しかし、それはほんの数分だ。警戒体制を早める意図はないだろう。
(なぜ第三ラボなのだろうか?)
ヒルダの計画を妨害する意図であれば、無関係な第三ラボを爆発する理由はないのではないか。そうなればやはり無関係ということになるがタイミングが気になった。偶然で済ませて良いのだろうか。
(まあいい。今のところ影響はない)
結論は出なかったがヒルダは考えるのをやめた。今は計画を遂行するのみだ。何か障害が発生したらその都度対応すれば良い。
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