誰にも知られないなかで進む、継続的な暴行と性的暴力。
学習性無力感のなか、やがて彼女は自己肯定感、ひいては自我をも薄れさせていく。
近しい者が少女の心を殺して行く。
それも継続している。
一人称で語られる虚ろな心情の吐露は、痛ましくて悲しい。
現実にもある事柄の抽出。
誰の名称もない。
地名も学校名もない。
特定されないから、どこでもありえる。
文学の手法である。
状況の抽象性が高い事物は、普遍的でもある。
どんな場所にも、どんな人にも当てはまる事柄だ。
だから読む者に目を逸らすことを許さない。
物語にちりばめられた比喩。
輪郭を失う。黒い嵐、溶解。にじみ出る体内の黒さ。
そこに日常感覚の〝におい〟という言葉を混在させることで絶望の臨場感をあげていた。
文字を追う毎にやりきれなさが募る。
見えない檻。世の中に昔から偏在し、ずっとある地獄。
それをただ見つめる。そんな物語です。