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とある日の午前、俺は純喫茶のテーブル席で料理の提供を待っていた。相方である鏡花は嬉しそうな、少しいじけた様な、なんとも複雑そうな顔をしながら、スマホを弄っている。
この複雑な表情の理由は、見たかった映画が見れた事。思いの外自分の心の的に刺さった事。けれども、リマスター版であるが故にパンフレットやグッズが売られて居なかった事に起因する。
――映画良かった〜。終始意味分からか無かったけど、関係性が一つに収束してた。
――グッズもパンフレットも、再三見ても無かった〜……。
実際、映画は目眩く場面が変更され、起承転結が分かりにくい。何が事実で、何が幻想なのか分かりにくい。映画館を出たあとも、まだ夢に囚われている様な奇妙な気分になる映画であった。
だがその散り散りになっているものこそが、ある意味の魅力であり、 面白さであると思っている。何より彼処に登場した日本人形や、フランス人形の一つを持ち帰りたい気持ちに狩られた。
「入場特典も売り切れだったしなぁ。うーん。やっぱり情報が遅かったかぁ」
少しばかり愚痴を言っているが、自分の中では消化され、終わった事であるらしく、あまり執着してない様な軽い口調であった。
「全てが万事解決するなんて事はないのだから」
それはお前が綿密に情報を集め、予定通りを完遂したとしても、構造理解の天才であっても、其れはきっと変わらない。
「まぁそうだよね」
何故か嬉しそうに、視線をくるりと回した。
早朝にあくせくと準備をし、早朝訪れた飲食店で、忙しいのか挨拶は無理され、お昼時に訪れた純喫茶でも目が合った店員にも無視された。どうにも上手く行かないこともある。
其れは分かっている。世の中夢の様に、何でも思い通りになる訳ではないのだ。……あぁいや待てよ?
「夢って意外と思い通りにならないよね? 今朝見た夢も、変な人に付き纏われる夢だったし」
知らない人から挨拶され、適当に返事をしたら、『何処へ行ってきたの?』、『楽しかった?』などと後を付けられた。場面が変わって、何処かの廊下に訪れても、煩く呼び鈴を鳴らされた。
「ある意味では、夢と現は大差ないのかも知れないな」
夢の中ぐらい、幸せで居させてよ。
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