わたしとご主人の散歩時間

衿乃 光希

第1話 桃 1歳4ヶ月×1月×みかん

 ご主人が使うローテーブルに、黄色い物体がおいてあった。

「これ、なあに」

 鼻先でちょっとつついてみる。

 それはちょっと揺れて、すぐに揺れは収まった。

 少し力を加えてつつくと、それはころりんと転がる。

 わたしははっとした。これは、ご主人が投げて遊んでくれるボールだわ!

「ボール、ボールよ。うわーい」

 つんつん転がすと、黄色のボールはテーブルから落ちた。


 わたしはボールを加えて、ご主人の元に走った。

「ご主人、遊んで遊んで」

 がらっと部屋の扉が開いて、ちょっと前に出て行ったご主人が戻ってきた。

「桃ちゃん、何をくわえてるの? ってこれ、みかん!?」

 かがんでわたしを見たご主人は、私の口の中にあるボールを取った。

 投げて投げて。

 私は巻き尾を振って、いつでも動けるように、ボールを注視する。

「桃ちゃん、これはみかん。遊べないの」

 投げて投げて。

 期待を込めてご主人をじっと見つめる。

「もう……遊べないんだって。仕方ない。晴れてきたし、お散歩行く?」

 わたしは耳をピンと立てた。

「お散歩―! 行く行く!」

「準備するね」

 ご主人はわたしの頭をなでなでしてから準備をして、お外に連れ出してくれた。


「寒いね。桃ちゃん大丈夫?」

 ご主人が白い息を吐きながら、話しかけてくれる。

「わたしは寒いの平気。だってご主人が温かいお洋服を着せてくれたんだもん」

 ご主人がわたしに着せてくれたお洋服は、犬用のコートだよって教えてくれたの。

 オレンジ色で、茶色の毛のわたしによく似合うってご主人が喜んでくれるの。

 ご主人が笑顔だと、わたしも嬉しいの。

 一緒にお散歩楽しいな。

 おひさま、顔を見せてくれてありがとう。

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