第2話 カルナス到着と最初の依頼


朝の光が、カルナスの町を穏やかに照らしていた。

川谷ゆうじは、昨夜の国外追放の衝撃をまだ引きずりながらも、町の

広場を歩いていた。木造の建物が並び、石畳の道を行き交う人々は活気

に満ちている。


「ここが……俺の新しい生活か」

小さな息を吐き、ゆうじは背筋を伸ばした。胸の中にはまだ不安があっ

たが、それ以上に「やってやる」という気持ちが膨らんでいた。


掲示板には冒険者ギルドの依頼が貼られている。簡単な護衛からモン

スター退治まで、多種多様な依頼が並んでいた。


「ふむ……まずは簡単そうなやつからか」

ゆうじは目を凝らし、初心者向けの小規模依頼に目をつけた。

“森の害獣討伐:報酬50G”


手持ちのゴールドは少ない。変換スキルを使えば、少しは強化できる

かもしれない。だが、ランダムにステータスが上がるため、運も味方に

しなければならない。


ギルドの受付で依頼書にサインをする。女性スタッフは笑顔で渡して

くれた。

「初心者さんですね。森の中で怪我をしないように気をつけて」


ゆうじは深く頷いた。

「はい、頑張ります」


森への道を歩きながら、ゆうじは自分のスキルを思い出した。

『転移』――行ったことのある場所に一瞬で移動できる。戦闘には直接

関係ないが、逃げる・移動するには便利だ。


『変換』――使用したゴールドをランダムステータスに変換する。

運が良ければ、力や体力が急上昇するかもしれない。


森の入り口に到着すると、そこには小さな害獣が現れた。丸い体に小さ

な牙、動きは鈍い。Fランクのゆうじでも十分対応できる相手だ。


「よし……まずは転移で位置取りだ」

ゆうじはスキルを使い、木々の間を瞬間移動して害獣の死角に回り込む。


攻撃はせず、ただ静かに獲物を追い詰める。Fランクの冒険者にしては

珍しい慎重さだ。害獣は混乱し、逃げ惑う。


「これで……仕留められるか?」

ゆうじは小石を拾い、最終的に動きを封じる。

一撃で倒す力はないが、戦闘スキルがなくても工夫次第で勝てる。


討伐を終えると、森の奥から光が差し込み、金貨の輝きのような報酬が

手に入った。50G――少額だが、ゆうじにとっては貴重な財産だ。


「よし……これで少しステータスを上げられる」

ゆうじは変換スキルを使う決意を固めた。手持ちのゴールドをステータ

スに変換する。ランダムなので、どの能力が上がるかは運次第だ。


画面のように頭の中で数値が変動する感覚。ゆうじの筋力が少し上がり、

体力も少し増えた。運良く、行動力も微増した。

「……これなら、少しずつ強くなれるかもしれない」


森を抜けて町に戻る途中、ゆうじは初めて町の商人と話した。

「おや、初心者冒険者か。君、あの森で一人で討伐したのか?」

驚きと敬意の混じった声に、ゆうじは少し照れた。


「はい……なんとか」

まだ自信はないが、少しずつ異世界での居場所を感じ始めていた。


町に戻ると、ギルドでは他の冒険者たちが次々と依頼の報告をしていた。

Cランクの冒険者たちはゆうじに気づき、軽く声をかけてくれる。


「初めての依頼で無事だったんだね」

微笑む女性の冒険者――後にサフィアと呼ばれる彼女だった。

ゆうじの心は少し軽くなった。


ギルドの掲示板には、さらなる依頼が次々と更新されていく。

「ここが……俺のステージか。まずはFランクでも、少しずつ上を目指す」


日が暮れ、カルナスの街に夜の静けさが訪れる。

ゆうじはギルドの宿で一人、今日の冒険を振り返った。

「攻撃力はなくても、工夫すればやれる……」


そして、どこかで自分を見守る目があった。

“この少年、面白い――まだ本気を見せていない”


国外追放から始まった最底辺Fランク冒険者の挑戦は、

こうしてゆっくりと、しかし確実に歩みを進めていくのだった。

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