AI禁止の異世界に召喚されたけど、本作はAI生成物なんだが?

@hoshiha_rei

第1話 「自動筆記」は禁止魔法らしい

「――勇者様! どうか我らを救ってください!」


目が覚めたら、目の前に神官がいた。

背景は白い大理石。天井は金ピカ。周りを取り囲むローブ集団。

あまりにも見たことある光景だった。


「……テンプレだ」


私は三枝ひより、社畜OL。

現実という名のクソゲーに疲れ、寝る前に「異世界転移もの」を読んで現実逃避していたら、本当に転移したらしい。


「まず確認です。ここ、どこですか」

「聖都オットリア! そしてあなた様は――」


神官が胸を張った瞬間、視界にピロン、と半透明の板が出た。


```

【ステータス(暫定)】

名前:ミサエギ・ヒヨリ

職業:召喚者(臨時)

スキル:AI操作(神託運用)/議事録生成/炎上対応

——

model:ORACLE-神託 v3.12(宮廷カスタム)

temperature:0.7

token_budget:12%(危険域)

```


「……え、なにこれ」


下の方、完全に余計な情報が混ざっている。

temperature? token_budget? RPGのステ画面に、急にLLM(大規模言語モデル)のパラメータを混ぜるな。


「勇者様、どうなさいました?」

「いや、温度って何?」

「神のご機嫌(パラメータ)です」

「雑!」


神官は真顔だった。

私のツッコミは空中で死んだ。


立ち上がって周囲を見る。祭壇の裏の壁に、羊皮紙が釘で打ち付けられていた。


```

【重要】自動筆記(オートマタ)は禁止です(定義:気分)

禁忌に触れた者は、吟遊掲示板へ通報してください。

運営神官オットー

```


「……あの、自動筆記って?」

「魂なき言葉のことです。神への冒涜であり、即刻火炙り(アカウント停止)です」

「火炙りが現代的(BAN)」


要するに、AI生成禁止ってことか。

なのに私のスキル、AI操作なんですけど。


「で、救ってくださいって、何を?」

「帝国が……滅びます」

「重いな」


神官が苦しげに言う。

飢饉、治安悪化、税の取り立て、貴族の内輪揉め。

テンプレの詰め合わせセットだった。

ただし、途中から言葉が変になる。


「神託が、最近、偽典(フェイク)を……」

「フェイク?」

「はい。もっともらしい“虚無”を吐くのです」

「ハルシネーション(幻覚)のことかよ!」


異世界用語に変換するな。ややこしい。


私は深呼吸した。社畜の呼吸。会議前の呼吸。


「分かりました。まず“現場が一番困ってること”を一個に絞ってください」

「困っていることは山ほど――」

「山ほどは無理。山ほどを一個にするのが私の仕事なんで」


神官が口を開けた瞬間、視界の端に赤字が走った。


```

【THINKING...】

目的:世界救済(建前)/炎上回避(本音)

制約:露骨NG/差別煽りNG

候補:A 魔王討伐 B 配給是正 C 恋愛イベント発生

採択:B(安全策)

```


「……なんで選択肢に恋愛があるの」


私の頭の中で、誰かが勝手に会議を始めている。

しかも「安全策」で配給を選んだ。


神官が困惑した顔をする。

その目の前で、板が切り替わった。


```

【出力:予言書(簡易)】

課題:配給の滞留による騎士団内の不満

最短手:倉庫の棚卸し→不正ルート遮断→配送優先度の再設定

検証:3日で欠配率を半減(目標)

```


「……予言書?」

「神託が出ました!」


私が何もしてないのに、勝手に出た。

神官が震える手で紙を受け取る。


「すごい……まるで、人間が考えたような具体性……!」

「普段はどうなの」

「普段は『愛と勇気で頑張れ』とか言われます」

「自己啓発BOTか」


そのとき、横から鋭い声が飛んだ。


「貴様、人形(ドール)か!」


振り向くと、少女が指を突きつけていた。

目がギラついている。一般市民っぽいのに、殺気がすごい。


「指! 指を見せろ!」

「はい」

「……五本だ! 六本じゃない!」

「五本だよ!」

「チッ、人間か……一旦保留!」


少女は舌打ちして走り去った。

なんだ今の。


「今の誰?」

「異端審問官……いえ、通報勢です」

「通報勢」

「魂なき者を見つけると、吟遊掲示板(SNS)に通報して炎上させます」

「魔王よりタチ悪いじゃん」


この世界、終わってるかもしれない。


「勇者様……」

「はいはい。行きますよ。予言書が出ちゃったんで」


私は諦めて歩き出した。

とりあえず、このブラックな異世界を「運用」で直すしかないらしい。


扉が開いた。


「待て。護衛が必要だ」


白銀の鎧の男――騎士団長が入ってきた。

顔が良い。無駄に良い。


「リオン・ヴァルハルトだ。ここから先は俺が守る」

「あ、どうも」

「近いぞ」

「はい?」


リオンがいきなり距離を詰めてきた。

顔が近い。吐息がかかる距離だ。

これが“溺愛ルート”の強制イベントか?


その瞬間、視界がブラックアウトした。


```

【モデレーター:違反の可能性(過剰な密着描写)】

【生成中止】

【ロールバック:チェックポイントへ】

```


――パッ。


気がつくと、リオンは3メートル離れていた。


「……と、いうわけで俺が守る」

「今、巻き戻ったよね?」

「巻き戻ったな」

「気まずくないんですか?」

「俺は、お前に近づこうとした記憶があるが、気がついたらここにいた」

「検閲だ……」


過剰な色気は運営に消されるらしい。

なんてクリーンで健全な世界だ。


リオンが剣の柄に手をかけ、ニヤリと笑った。


「面白い女だ」

「それ、死亡フラグですよ」

「なんだそれは」


通じなかった。

私はため息をついて、現場に向かった。


この世界、ツッコミどころが多すぎる。


---


## 生成ログ(架空)

- 使用モデル:ORACLE-神託 v3.12(運営カスタム:健全寄り)

- 消費:prompt 1410 / output 1090(※無駄な色気をカットしました)

- temperature:0.7→0.2(ロールバックにより無難化)

- 幻託率:中(神官談「普段よりマシ」)

- 運営注記:指の本数を確認するのは仕様です。

- AI自己レビュー:冒頭のテンプレを短縮し、ファンタジー用語に置換しました。

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