魂の名。真名。
真名が見える探偵──鳥辺契。
京都を舞台とした物語は、それだけで妖艶さを帯びる。
そこにある文は、読めばふと心の中で光を纏って浮かび、舞い散る桜のように消えてゆく。
美しい余韻が、静かに沁みてくる。
まるで夜桜だ。
ライトアップされた桜ではない。月に照らされた桜の、ひやりとした輪郭。
文をなぞる指が、その光を捉える。
すると目には情景が湧き、また次の情景へと誘われる。
「美しい」だけで片づけるのが、なぜか惜しい。
鳥辺野に行きたくなる。
そして飴を口に含もう。カロコロと噛めば、あの風景に出会えるかもしれない。
珠玉の作品です。