嫁になってくれ《4》
風鈴
第1話 山の恋は急変中
未奈は父親の慰霊登山を終えて大学生活が、今までとは少し色づき始めてきたことが嬉しかった。
あの日、山頂で涼から改めて交際を申し込まれた。
『俺は本気だ、嫁にするつもりだが、まずは恋人から始めよう』
涼は真剣に真剣告白した。
『良いの?私で』と言ったが、『おまえじゃないとだめだ』と耳元で囁きかけられて頷いてしまった。
下山後から梅雨入りとなり鬱陶しい日々が続いた。未奈も大学の実験とレポートで毎日が忙しかった。トレッキング同好会も週未が必ず雨模様になり活動ができなかった。
涼も勉強に忙しいようでメールは入るが、会えない日々が続いていた。どんよりとした天気に未奈の気持ちは塞ぎがち、同じ学部の友人達の噂話で『男達は手に入れたら放っておく奴がいるけど、それって男達の横暴だよ。続けるには男達は会う努力が必要だよ』と言う言葉が何故だか頭の中でぐるぐる回る。
その上に昨日の食堂で同級生達と楽しそうに昼食を囲んでいる涼を見て声をかけようと思ったが、涼の周りには女子学生が囲んでいるのを見て回れ右してしまった。
ほーっとため息が出て未奈は思わず口を手で覆った。それを親友は見逃さない。
「どうした」
「見逃せよ」
「山から戻ってウキウキしていたのにため息とは、色っぽいじゃありませんか?それとも、あの雀達が言っていた言葉が離れないの?」
綾美が先日の休講の時間に同級生達が根拠もない話しを延々駄弁っていたのを未奈が気にするだろうと思ったら案の定だなぁと思い声をかけた。
「週に二回もロングの実験でレポートが続くとため息も出るだろうそれだけだよ」
未奈は気にしてないと言いながら気にしていた。
「それなら良いけど、新しい恋にはデートが必須だよな」
「デートってそんなことは思っていないよ」
「ハイハイ良いですよ。ねんねと言われていた未奈に正式な恋人、それも相手はあなたにぞっこんで幼馴染みであるそれだけで観察者いや傍観者としては楽しくなる」
綾美は茶化して嬉しそうだった。
「いい加減にして欲しい」
彼女の携帯電話が低いバイブ音で震えた。メールを確認して彼女は言った。
「あら、今日は第1食堂混んでいるから第2食堂に行こうよ」
「えぇー、第1食堂のカレーが食べたいのにー」
親友は有無も言わせずに第2食堂に手を引いて連れて行くとそこには涼と草壁がいた。
「あっ、布施君お久ぶりね」
白々しく彼女は挨拶をした。
「綾美先輩、お久ぶりです」
草壁が綾美に挨拶をする。
「草壁いつも元気だね。未奈はカレー食べたいの?それじゃ、カレーうどんを買ってきてあげるから布施君と席を取っていて」
そう言うと綾美はさっさと草壁と食券売り場に消えた。
「お久しぶり、元気だった?実験とレポートで大変なんでしょ」
「未奈もそうだろう」
「お互い大学生なんだから、勉強もしないとだめだよね」
「そうだな、あのさこの前第1食堂にいただろう」
「うん、とてもじゃないぐらい女子に囲まれていたね」
ちくりと胸が疼く。
「あれな、次の解剖学の実践授業で絶食の方がゲロしてもましだと先輩が言うからクラス全員朝から食べられなくてなんとなく集まっていたんだ。それなら食べなくても大丈夫かなぁって集まっていたんだ」
「そう、大変だった?私も後期に解剖学あるんだ」
「はじめはビデオ映像だけど実践授業はまぁなぁ、慣れるらしいが大変だよ」
「そう、私も後期の時は絶食で臨むことにするわ」
「梅雨が明けたら大文字山に登らないか?」
「それは良い、登ったことないし」
「おにぎりと甘い玉子焼きよろしくお願いします」
涼はふざけて未奈に話すと首を縦に頷いていた。
「あらら、未奈顔色良いじゃん、恋人同士は適度に会わないとだめだよ。布施君」
綾美と草壁が2人の食事を運んでくれた。
「そう思う、大文字山に登ろうって」
綾美に小声で言うと良かったねと言うように彼女は微笑んでくれた。
嫁になってくれ《4》 風鈴 @Fu-rin00
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます