第2話 青がまだ名前を持っていた頃
昔のことを、思い出そうとして思い出すことはない。
大抵は、どうでもいい拍子に、勝手に浮かんでくる。
ホームのベンチに腰を下ろした瞬間だった。
背中に当たる金属の冷たさが、妙に懐かしかった。
高校の頃、ここによく座っていた。
正確に言えば、ここによく集まっていた。
部活でもなければ、帰宅部でもない。
誰に命じられたわけでもなく、
ただ、夜になる前の時間を持て余した連中が、
自然と同じ場所に集まっていただけだ。
駅の近くの小さなスタジオ。
安い音、狭い部屋、古いエアコン。
それでも、あの頃の僕らには十分すぎる世界だった。
歌が上手かったわけじゃない。
演奏が巧みだったわけでもない。
ただ、
「今ここにいる意味」を、
音に預けることが出来る気がしていた。
夜が来る前の空は、今よりずっとはっきりしていた。
青は青で、
そこに疑いを挟む余地なんてなかった。
未来の話を、何度もした。
叶うかどうかは、正直どうでもよかった。
話している時間そのものが、
僕らにとっては証明だった。
このままでは終わらない、
という感覚だけが、確かにあった。
始まらなかった。
それだけの話だ。
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