番外編「ドラゴンのグルメ日記」
我の名はヴァルニグ。
かつては「黒銀の災厄」と呼ばれ、人間どもに恐れられた高貴なるドラゴンである。
だが、今の我は「ベル」と呼ばれている。
不本意な名だが、飼い主(パートナーだと言い張るが、実質的に餌付けされている)のカイがそう呼ぶので仕方がない。
今日の朝食は、特大の「ギガント・コーン」の素焼きだった。
香ばしい匂い。
噛むと溢れる甘い汁。
最高だ。
以前、人間を食っていた頃は、硬い鎧ごと噛み砕かなければならず、味も鉄臭くて最悪だった。
それに比べて、カイの作る野菜はどうだ。
宝石のように美しく、食べるだけで力が漲る。
最近では、鱗の艶が増し、ブレスの火力も上がった気がする。
「ベルー、昼飯だぞー!」
カイの声が聞こえる。
我は尻尾を振るのを必死に堪えながら、威厳を持って(小走りで)向かう。
今日のメニューはなんだろうか。
新作の「ドラゴンスレイヤー・チリ」を使った激辛カレーだろうか。
あれを食べると、口から火を吹くのが止まらなくなるが、それがまた癖になるのだ。
農園には、最近多くの人間が出入りするようになった。
彼らは我を見て悲鳴を上げるが、我が野菜を食べている姿を見ると、安心したように笑う。
平和ボケした連中だ。
だが、悪くない。
誰かに恐れられるより、こうして美味いものを食って寝て、たまに畑の害虫(盗賊)を追い払う生活のほうが、数千倍も豊かだ。
『ウ、ウマイッ!』
カイが差し出したピザ(トマトとチーズの極上ハーモニー)を頬張り、我は心の中で叫んだ。
やはり、人間を滅ぼすのはやめておこう。
この男が野菜を作り続ける限り、我はこの農園の守護竜として生きていく所存だ。
おかわりを要求するために、我は鼻先でカイの背中を突っついた。
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