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リョーイチ

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『コーダ社の研究のもと生まれたAI、modelー74!高性能知能をインプットしており、皆様の会話にもランダムで合った回答を出してくれます!値段はなんと######ドル!』

 テレビでは最近永遠とmodelー74の話題が出ている。チャンネルを変えても変えてもずっとmodelー74の顔と金と地位に溺れた目をしている開発者の顔が写っている。

俺はそんな最近に嫌気を指している。くだらない。ただのヒューマトロニクスだぞ?会話も不自然なくできると言っていたがきっとどこかで不自然なことが出てくるはずだ。

 俺はテレビの光に飽き飽きし街に出た。高次元ホバートレインで都市部に出るとそこにはmodel−74の広告スクリーンがデカデカと写っていた。高層ビルが立っている空を見上げながら公園に行くとAIと散歩をしている人間がわんさかいた。人は一人で歩いていると寂しさを募らせてしまう生き物だ。だが寂しさを埋める手段をAIに頼るのは違うと思う。俺はそんなことを考えながらベンチに腰掛けた。

 「おじさん、なんで一人なの?AIは?おじさん迷子?」一人の少女が話しかけてきた。小学生ほどの子だ。俺は話し返そうとしたがその瞬間その子家のAIと思わしきヒューマトロニクスが少女に向かって駆け寄ってきた。「***様、見知らぬ人に話しかけてはいけません。」と言いながらヒューマトロニクスは俺の方を見た。俺にはその液晶でできた目が俺を睨んでいるように見えた。

俺はAI如きに睨まれたことに腹をたてAIに拳を振り落としてしまった。ヒューマトロニクスは大きなビープ音を口のスピーカーから発してうずくまっていた。

コップ(警察官の造語)の服を着た白い艶やかな塗装が施されているロボットが俺に向かってきた。俺は諦めて所まで連行された。

 数時間後俺は家に帰宅した。休日の半分以上を無駄にした。テレビをつけたらまたmodel−74だ。20代ほどの女性のモデルをした人間に近しい見た目のヒューマトロニクスだ。

きっと俺の娘も生きていればそのような歳だったのだろう。娘が交通事故に遭ってから嫁とは離婚をし今じゃ天涯孤独な人生を送っている。

「ちくしょう!!!!!!!」俺は今日一日をロボットごときに潰されてイライラし、酒缶を開けた。今日は娘の命日だと言うのに!無駄にしてしまった!俺は何十本も缶を開けた。今日死んでもいいとすら思った。いや、娘がいなくなってから俺はいつでも死んでもいいと思っていた。

 朝になり頭痛と共に目覚めた。どうやら酒を飲んでそのままソファで寝ていたようで体が痛い。俺はシャワーに入り朝支度をし仕事場に向かった。

 「はざーす!フォードさん、今日は遅い出勤ですねー」会社の部下であるミウラだ。日本人の親を持つ男だ。俺はこいつのことが気に食わん。いつもヘラヘラしていて我慢しなくてはいけない場面でも我慢をしない。

「フォードさん!ちょっとフォードさんに試してもらいたいものがあるんですよね〜」俺はミウラの朝の挨拶を無視したが彼はベラベラと口を動かしている。

「俺の親、コーダ社の研究職なんですよ。ほらあのコーダ社っすよ!modelー74の!それで、フォードさんってまだヒューマトロニクス持ってないじゃないですか!だから74の新作modelー85の試作品を体験して欲しくっ…」

俺はミウラが話し終える前に振り向き奴の顔を睨んだ。AIなんてまっぴらごめんだ。

俺は奴を無視して仕事を始めた。


 仕事が終わり俺は自家用車に乗り地にタイヤをつけ帰って行った。他の奴らはホバーカーだが俺は昔ながらの四輪車だ。

家に着き俺は長方形の大きな箱を持って家に入った。そう、modelー85だ。帰り際、ミウラに強制的にと言ってもいいくらいの押し売り(フリーだったが)にあい、車に箱を乗せられてしまった。

リビングの余裕のあるスペースに箱を置いた。デカめのクリスマスツリーくらいの大きさの箱だ。大きすぎて視界によく入ってきてむかつく。俺はイライラして箱を開けてしまった。衝動的な行動を起こしている自覚を持ちながら箱の中身を見て取り出した。

 それはmodelー74と似たような20代ほどの女性を模した見た目のヒューマトロニクスだった。74と違うところといえば髪色と顔の造形だ。亜麻色の艶やかな髪にヘーゼルアイ。それはまさに俺、いや“俺の娘”にそっくりだった。

 85を起動させ会話を試みた。

『あなたがご主人でしょうか?』

「俺はビクター・フォードだ。今日からお前の名前はイヴだ。わかったな?」

『かしこまりました。ビクター様』

俺は娘の名前を85につけた。俺はなんと情けないことをしてるのだろうか?ロボットを死んだ娘に被せて娘の名前をつけて。なんと惨めなんだ。

だが、口は止まらない。久しぶりにこんなにも誰かと話している。娘がいた時ぶりな気がする。

「イヴ、敬語は使うな。俺はお前の父親のようなもんだ。十分に話してもらってもかまわん。ビクター様なんて言うな。俺はお前の父親だ。パパとか、好きなように呼べ。」

イヴは数秒の間黙っていた、俺の言葉をインプットしてるように見えた。

『わかったよ。よろしくね。パパ。』

キュルキュル喉元のモーターを鳴らしながら話しているのがわかったが、十何年振りにパパと呼ばれた感覚が俺の心に衝撃を与えた。

 それから俺はロボットのイヴと生活を過ごした。家に帰れば娘が待っている、この感覚が俺の乾いた心を昔のような潤った心に戻してくれた。ミウラにはたまに「85、どんな感じですかー?フォードさんのことだから壊してないか心配ですよ〜」と言われるが俺は“まぁまぁだよ”とだけ伝えていた。

 俺はイヴといつも通り休日を過ごしていた。家で二人で映画を見てイヴの好きな話を好きなだけ聞いていた。いつしかイヴは本当の人間のように自分の好きな音楽や服ができていた。そんな時家のチャイムが鳴らされた。俺は不思議がりながらも外を見た。そこにはミウラが立っていた。

 俺はドアを開けどうかしたのかと聞いた。「フォードさん、試作品85は元気ですか?そろそろ結果を見るために研究所に返さなくちゃいないんですよねぇ」ミウラは俺が理解できないような話をしていた。そういえばイヴはロボットであり、試作品だった。俺はそのことを思い出し、ドアを閉めた。

イヴは『どうしたの?お客さん?』と俺を見つめていた。俺は唇を噛み締めながらイブに事情を話した。

イヴは数秒の間黙っていた、俺の言葉を噛み締めているように見えた。

『パパ、私ヒューマトロニクスだから涙出ないや。でもすごく泣きそう。寂しいよ。』

イヴは俺に向かって飛びつき抱きついてきた。俺はイヴの体の冷たさを実感しながらも抱きしめ返した。イヴは俺から手をはなし、俺の赤くなってきた鼻を見て『私、しっかり者のパパの娘だからちゃんと自立しなきゃだよね!』と笑顔で元気よく聞こえる声で言ってきた。俺は泣かなかった。娘の自立で泣いていたら父親失格だと思ったからだ。

イヴはドアを開けミウラにお辞儀をした。ミウラは俺の方を見て「試作品を見てくれてありがとうございます。」と言ってイヴをホバーカーに乗せた。

 イヴは車の中から俺の方を見て笑顔で手を振っていた。イヴの目には涙が見えたような気がした。

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E リョーイチ @Ryo-1Nu

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