枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

第1話 月の精霊


 私はニルス国の西にあるチェスナット辺境領の隣にある小さなグラマリン男爵領にある聖教会の神官の娘だ。


 まあ、娘と言っても母の連れ子だったので父は義理の父に当たるのだけど。


 母は隣国のキアラルダ帝国の人間だったが反乱がおき難を逃れてこのニルス国に逃れたと聞いている。


 私はまだ乳飲み子で命からがらこのグラマリンという土地の聖教会に辿り着いた。


 そこで優しくしてもらった今の義理父ローダンと結婚をした。




 そして幸せに暮らしていたが、私が10歳の時私と母が薬草を摘みに行った近くの森で魔物と遭遇。


 母は急いで私を連れてそばにあった月色樹に持っていた小さなナイフで傷をつけると言った。


 「いい?フレイシア。この木には月の精霊が宿るって言われているの。だからこの樹の樹液を飲めばきっと月の精霊が助けて下さるわ。安心して、さあ、あなたはこの祠の中に隠れて絶対に出て来てはだめよ。わかった?」


 「うん、早く母様もここに入って」


 「母様は大丈夫。いいから安心してここに隠れているのよ」


 「かあさま‥」


 母はそう言うと走って月色樹から走って距離を置いた。


 私は恐る恐る母の行く先を目で追った。


 「ぎゃおぉ~!!うがぁぁぁぁ~」


 大きな真っ黒い魔物が真っ赤な目を見開き大きな口を広げて母様に襲い掛かった。


 「かあさま~」


 私は祠から出ようとすると金色の光が私を包み込んだ。


 (今、出てはだめ。母様と約束したでしょ?)


 そんな言葉が脳内で響いた。


 「あなたは誰?お願い母様を守って‥」


 私はそう願ったが何の返答もなかった。


 ただ、目の前で魔物に襲われ倒れる母を目の当たりにして私はそのまま意識を失った。




 それから、魔物に引き裂かれ真っ赤に染まる母様の姿、ぎゃあぁあと母様と思えないような凄まじい悲鳴に目が覚めた。


はっと辺りを見回すと自分の部屋のベッドの上にいた。




 急いで起き上がり部屋を飛び出した。


 母様は無事だろうか?魔物は?私はどうやってここに?


 色々な事が脳内を駆け巡った。


 急いで教会の敷地にある屋敷の一階に駆け下りて(母様。どこ?かあさま~)と叫んで回った。


 母様の寝室の扉を叩くとすぐに父が寝室から出て来て私を抱きしめた。


 「フレイシア。母様はここだ。さあ、早く顔を見せてあげるんだ」


 寝室に入ると母様は頭や腕に包帯を巻かれて眠っていた。


 「‥‥(母様、しっかりして。フレイシアはここだよ。ねぇ、かあさま)」


 私は口をはくはくさせていたが声が出ていなかったらしい。


 「フレイシア、声が出ないのか?」


 「‥‥(えっ?)」


 「フレイシア?」


 「‥‥‥(父様?私‥声が出てない!)」


 やっとその時になって声が出ていない事に気づいた。


 「ああ、可愛そうにフレイシア。きっと魔物に襲われた母様を見てショックを受けたんだ。大丈夫。そのうち声は出るようになるから、さあ、母様の手を握ってあげるんだ」


 私はショックを受けながらも今は母様の方が大事だと気づき父様が置いてくれた椅子に座って母様の手を握りしめた。


 「(母様、どうか、どうか元気になって。月の精霊様、どうか私を助けてくれたように母様を助けて下さい)」


 心の中で何度も何度もそう祈った。


 すると淡い光が手のひらに現れた。


 これはもしかして月の精霊の?


 あの時母様が言っていた事が思い浮かぶ。


 私は急いでその光を母様の傷に当てた。傷はほんの少し治りかけたが私の治癒力が弱すぎて傷を治しきる事が出来ない。


 


 父様は私が発する光を見て驚いたので私は母様が月色樹の樹液を飲ませた事やあの樹には月の精霊が宿ったのではないかと教えた。


 「そうか。セピナが‥フレイシアいいかい。この力の事は誰にも知られてはいけないよ。このニルス国では魔法を使えるものは貴重なんだ。こんな力を持っていると分かればきっと王都の教会に連れていかれるからね。父様と約束してくれるね?」


 私はものすごく真剣な顔をしてそう言った父様の言うことを素直に受け入れた。




 何度も母様に魔力を注ぐが母様の具合はあまり回復しない。落ち込む私に父様が優しく教えてくれる。


 「いいかいフレイシア、魔物に受けた傷には悪い瘴気が含まれているんだ。その毒を取り除くにはものすごい魔力が必要で子供のフレイシアにはまだ無理なんだ。だからフレイシア‥きっと母様は元気になるから」


 「‥(うん、きっと助かるよね)」そう思いながら私は父様に抱きついて泣いた。


 


 そうこうしているうちに母様は身体中に毒が回りそれから数日後に帰らぬ人となった。


 泣きじゃくる私の脳内に小さな声が聞こえた。


 (私の力が弱くてお母様を助けれなくてごめんなさい)


 (あなたはだぁれ?)


 (私は月の精霊のキア。あなたが私を呼んだから‥)


 (じゃあ、月色樹の?)


 (ええ、でも、私すごく弱い加護しかあげれないから)


 (そうよ。あなたがお母様を殺したんだわ。私の中から出て行って!二度と私に話しかけないで!)


 私は母様を失った悲しみのあまりキアにひどいことを言ってしまった。




 それでも私には少しだけど人を癒す力を失わなかった。


 だからそれからも父様と一緒に教会で出来る限り怪我や病気の人の手助けをして来た。


 この力の事をこの辺りの村の人は誰にも漏らす人がいなかったので私は月の精霊キアの加護をみんなの為に使った。まあ、病気も怪我も相変わらず完全に治す事は出来なかったが傷の治りが良くなったり病気のひどくならないのでみんなからは有難がられていた。


 でも、あれからキアが話しかけてくることは一切なかった。


 私、精霊に嫌われたのかな‥でも、全く見限らわけでもないの?


 そのままキアは現れず私もどうしていいかもわからずそのままになってしまう。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る