世界で一人だけの『剣魔法』使いである俺の、異世界限界突破ライフ~魔王が「頼むから死んでくれ」と泣きついてくるが、女神様が「最後は君と一つになりたい」と言って最強スキルをくれたので最速で強くなります~
ココア師匠
第一章
第1話 空っぽなあなたへ
魔王を殺した。
10年前に異世界にやってきて、チートスキルをもらった。
その結果、魔王を倒したのだ。
とんでもない死闘だったが、終わった後はどうでもよくなった。
「……んん、んんん、ん、んんんー……」
鼻歌が漏れる。ホルストの組曲『惑星』より「木星」。
かつて、誰かと笑いながら聴いた記憶がある。
誰だったか。もう、思い出せない。
「ひ、ひぃっ……! くるな、来るな化け物ッ!」
銀の仮面をつけながら、歌う俺。
生き残りの魔王の手下ではない、人間の騎士が、震える手で剣を向けてくる。
彼は、俺がこの世界を救うために共に戦ったはずの「仲間」の生き残りだ。
「化け物か。……心外だな。俺は君たちが望んだ通り、魔王を殺したはずだけど」
俺――カイトは、無造作に右手を振った。
それだけで、大気が爆ぜた。
騎士の身体は、言葉を発する暇もなく肉片へと変わる。
虚しい。
笑えるほど、心が動かない。
「サラ。ヒヨリ。ミナ。コハク……」
愛したはずの彼女たちの名前を呼んでみる。
だが、返事はない。
彼女たちはいなくなった。
ここではない、あちら側へ行ってしまった。
ただ、この胸に空いた巨大な穴――「空っぽ」の感覚だけが、現実だった。
俺は空を見上げた。
そこには、土星の環のように、不吉に交差する二色の光のリング。
巨大な『X』が、この終わった世界を嘲笑うように輝いている。
そして……俺は地面を見た。
そこにあるのは俺の『
これを見るたびに、不気味な気持ちに駆られる。
「……やり直したいなんて、言わない」
俺は、その剣を、自らの心臓ではなく、この「世界」の理へと突き立てる。
「…………すべてはこの世界に俺を送り込んだ、
どこまでいっても俺は空っぽだった。
その空っぽを埋めるように、今の俺は銀の仮面を身に着けているのかもしれない。
「全部、塗り潰してやる。全人類、殺してやる。俺が、この空っぽな世界の魔王だ」
俺はどこで間違えたのだろうか…………
――俺は昔の自分を思い出していた。
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挿絵 カイト
https://kakuyomu.jp/users/jtdpapdtdpd/news/822139842911734971
目を開けたとき、俺は白い部屋にいた。
病院ではない。色という概念だけが存在する、神聖な空間。
「あ、そっか…………俺、本当に死んだんだな」
実感がゆっくりと、確実に胸の奥に染み込んでくる。
俺はトラックに轢かれて、死んだ。
本当にあっという間だった。
空気のような時間をただ消費してきただけの人生だった。
誰にも強く記憶されず、誰かを強く愛することもなく終わったことへの後悔が、まだ熱を帯びて残っていた。
「あら、そんなに悲しい顔をしないで? 私が君を、最高の物語へ連れて行ってあげるから」
鈴を転がすような、脳がとろけるほど甘い声が響いた。
顔を上げると、そこには信じられないほど美しい女性が立っていた。
輝くような金髪を背中まで流し、その肌は透き通るように白い。
真紅の右目と、群青の左目は、宝石のように輝き、彼女の神秘性を際立たせていた。
何より目を引くのは、
その暴力的なまでに豊かな双丘――巨乳だった。
挿絵 女神
https://kakuyomu.jp/users/jtdpapdtdpd/news/822139842911781241
身に纏っているのは、薄いシルクのような布が数枚だけ。
彼女が動くたびに、たわわな果実が「たゆん」と重々しく、それでいて柔らかそうに揺れる。
深い谷間から漂う、花畑を凝縮したような甘い香りに、俺の心臓は生きていた時よりも激しく跳ねた。
「え、あ……あんた、神様、なのか?」
「うふふ、そうよ。君たちの言葉で言うなら『女神』かしら」
女神様は小首を傾げ、悪戯っぽく微笑んだ。その仕草一つとっても、たまらなく可愛い。
「君にはこれから、異世界へ行ってもらうわ。剣と魔法が支配する中世ファンタジーの世界よ。人間、エルフ、獣人たちがいて、魔力が空気中に満ちている……そんな、君が夢見たような世界。でも、魔獣が徘徊して、国同士の争いや魔王の脅威もある、少しだけ刺激的な場所ね」
「異世界……。でも、俺みたいなモブに何ができるんだ?」
「だから、私から特別な『ギフト』をあげるわ」
女神様がスッと指を振ると、空中に青白い文字が浮かんだ。
「まずはこれ。《
普通、その世界では『剣』か『魔法』のどちらか一筋に一生を捧げるのが常識なの。
両方を極めるなんて、人間には絶対に不可能」
女神様はまっすぐ俺を見つめた。
「でも、君だけは特別。剣の回路と魔法の回路を同時に、最大出力で使い放題にしてあげる」
「両方、最強……?」
「ええ。あら、それだけじゃ不安? じゃあ、これもあげましょう」
女神様は楽しそうに指を弾いた。
「あらゆる武器や装備を自分に馴染むように変化・最適化させる《装備最適化》。これで君は、あらゆる武器を自由自在に扱えるわよ! 今回はとりあえず普通の剣をあげちゃうね」
女神は掌にポンッと剣を召喚して、俺に渡した。
「え!……いいんですか!?」
「それに……そうね、倒した相手のスキルや能力を奪う《略式模倣》も付けちゃう! 君の剣の前では無意味になるわ」
「……すごいな、そんなに貰っていいんですか?」
「いいのよ。君には“最強”を楽しんでほしいもの。……あ、最後にもう一つ! 戦場全体を君の庭にする《領域同期》もプレゼント。これで君の行く手には、もう敵なんていないわ」
女神様は楽しそうに微笑み、ふわりと俺に歩み寄ってきた。
近すぎる。
彼女の温かい体温と、甘い体臭が鼻をくすぐる。
「カイトくん…………空っぽな人生だったらしいね…………」
慈しむような、あるいは憐れむような女神のその言葉に、俺は乾いた笑みを漏らすことしかできなかった。
「……まぁ、そうですね。否定はしません」
目を閉じると、暗闇の中に自分の人生が点滅する。
それは、色彩を失ったスライドショーのようだった。
何も成し遂げず。
誰にも愛されず。
そして――誰も、愛さなかった。
ただ一つ、消えない匂いがある。
夕暮れ時、狭いアパートに漂っていた出汁の匂いだ。
俺の記憶にある父さんと母さんは、いつも少しだけ疲れていて、でも優しかった。
俺は一人っ子だった。
父さんは東北の漁師だった。
自分の船を持ち、日が出ないうちに家を出て、日がどっぷり沈んだあとに帰ってきた。
豪快な人だったが、人を思いやる繊細さを持ち合わせていた。
今でも父さんの大きな背中は俺の憧れだった。
母さんは転んで膝を擦りむいた俺を、やさしく抱きしめてくれた。
『大丈夫よ、カイト。すぐ治るからね』
頭を撫でる、柔らかな手の温もり。
丁寧に貼られた絆創膏の、少しだけ窮屈な感触。
あの時、俺の「人生」という器には、確かに温かい何かが満たされていたはずだった。
けれど、両親がいなくなったあの日を境に、その器には大きな亀裂が入った。
十歳の冬。
あの日、すべてが流された。
大震災だ。
父さんは海の上で船ごと津波に沈んでしまった。
足の不自由だった母さんは、押し寄せる黒い水の壁から逃げることができなかった。
それからは、何を注いでも、ただ漏れていくだけの毎日。
もっと冒険すればよかった。
もっと誰かの記憶に残るほど、我儘に生きればよかった。
もっと、自分という人間を、誰かにぶつければよかった。
もうすでに記憶の中の父さんと母さんの顔がおぼろげになっている。
ピントが合わないカメラのようだ。
あんなに大切に思っていた人なのに…………
俺はひどいやつなのだろうか
──そして、大学二年生の冬。
赤信号。
膨張するライトの白。
乾いたタイヤの悲鳴。
そして、トラックに轢かれて呆気なく死んだ。
「やり直したい…………母さんに誇れるような自分になりたい」
俺の言葉に、女神は「うふふ」と、物語の台本をなぞるような、残酷に美しい笑みを浮かべた。
「いいのよ、それで。その『空っぽ』こそが、新しい世界では最強のスパイスになるんだから」
その言葉の意味を、この時の俺はまだ知らない。
自分がこの後、どんな地獄を、どんな「愛」を知ることになるのかも。
「最後は……私からの、特別な祝福よ」
「えっ――」
突然だった。
女神様は俺の首に腕を回し、その豊かな胸を俺の胸板に押し付けてきた。
むにゅ、という圧倒的な柔らかさの感触に思考が白く染まる。
そして、彼女の潤んだ唇が、俺の唇を優しく、でも深く塞いだ。
「んっ……、ふ……」
とろけるような甘い味と、膨大な「神秘な力」の奔流が口内から直接脳へと流れ込んでくる。
吸い付くような、濃厚な口づけ。
彼女の舌先が微かに触れるたびに、魂が震えるような快感が全身を駆け抜けた。
やがて唇が離れると、銀色の糸が一本、艶めかしく引かれた。
「ふふ、いけないわ。これ以上はおあずけね。これ以上だと私の理性が…………持たないわ……うふふ」
女神は垂れたよだれをふき取りながら、恍惚の表情を浮かべていた。
「……お、おぉぉ……」
めっっっっっっっちゃ、よかった。
なんかめっちゃ柔らかいし、めっちゃエロいし、めっちゃいいニオイした。
すき……。
女神様は俺の耳元に顔を寄せ、熱い吐息と共に、思わせぶりな言葉を囁いた。
それはとても甘い声だった。
「もし君が、この世界で誰よりも強くなって……本当の意味で限界を突破できたなら……」
「最後は、君と一つになりたいな」
「ひ、一つに……」
その言葉に、俺の中の何かが爆発した。
「君と一つにって……それって……」
顔を真赤にして、聞き返す。
「うん、そういうことよ!」
笑顔でそう言う。
かわいい。
「行ってらっしゃい。君の
女神様の眩い笑顔と共に、世界が再び消灯した。
眠りとは、よく小さな死と例えられる。
毎晩、死んだように眠り、毎朝、生まれたように起きる。
昨日の自分と、今日の自分に一区切りを付ける。
どんな過去があろうと、目の前の目覚めの感覚だけは本物だった。
ただ今日を全力で生きる勇気さえあればよかった。
次に目を開けたとき、俺の手には、あの女神の感触にも似た、熱い力が宿っていた。
そこは異世界だった。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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【イラスト】
ツイッターで女神様のイラストを公開しています。
https://x.com/MASTER_COCOA_/status/2012319387634512101?s=20
ピクシブも
https://www.pixiv.net/artworks/140047225
次回の更新もどうぞよろしくお願いします!
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