旅行日程は180泊182日 2



「すごーい! ブラボー!」

 パチパチと拍手をする。最大の賛辞だ。食事と水の心配がいらない! なんてすてき! もはやアウトドアじゃないね! グランピングだ!


 マリアはぽわっと赤くなった。

 あれあれ? かわいいな。ずっとすんっとすましていたのに、ほめられると弱いタイプ?

「そ、それからテントもお持ちしますわ」

「わあっ! サイコー! 夜露を凌げますね!」

「ええ、ええ。もちろんですわ。ア、ア、アリーさまを野ざらしにするなんて、もっての外ですもの。ア、アリーさまのお荷物だって、わたしがお持ちいたします」


 いちいちわたしの名前を噛むのはなぜかな? でも、いい子!

「自分の荷物は自分で持つからだいじょうぶですよ。食料とテントだけでも大助かりです!」

「こ、光栄にございます」

 マリアはますます赤くなった。うん、かわいい。


「もちろん調達できるところでは調達します。倒した魔物でも食べられるものがありますからね」

 レジ―が言った。

「え? 魔物って食べるんですか?」

「うまいやつもあるんですよ。なあ?」

 振られたジャックもうなずいた。

「おれ、わたしが捌きますよ」

 バーベキューだろうか。ちょっと楽しみ。


「ということで、荷物の心配は解決ですね」

 宰相閣下が言った。わたしはうなずく。

「とはいえ、川を渡るとその先は砂漠です。水の心配はなくても道中は厳しくなりますからね」

 なんで川から向こうが空白なのかと思っていたら、砂漠だったのか。


「ここで探索者の出番です」

「はいっ! おまかせください!」

 レイラが小学一年生みたいに、勢いよく手を挙げた。元気いいな、いただき女子。

「砂漠の中にはオアシスが点在しています。そのオアシスは『砂漠の民』の拠点になっています」


 今度は『砂漠の民」か。

「なので、オアシスを繋いでいくルートを取ります」

「『砂漠の民』って協力してくれるんですか?」

 …………。

 あれ? なぜ無言。


「はっきり言って、我らとは接触がありません。協力してくれるかどうかはわからないのです。物々交換で一泊をおねがいするしかありません。いくらテントがあったとしても、砂漠の夜は過酷ですから」

 日が落ちると寒いっていうもんね。

「できればオアシスで一泊して英気を養いたいところですね」


「下手をすれば攻撃されるかもしれない。その心づもりもしていただけると助かります」

 レジ―、涼しい顔でなにを言う。近づいただけでやられるんですか。なんて心の狭い。今どきアマゾンの部族だってスマホを持っているというのに。


「この先砂漠、草原、大森林と続きます。それぞれに部族がいて、生活をしています。彼らがみんな友好的とは限らないのですよ」

 川の民、砂漠の民、草原の民、大森林の民ですか。なるほど。


「大森林を越えた先が、山岳地帯ですね。そこに住んでいるものはいないはずです。ただ環境は一気に厳しくなります。岩場の山道になりますから。その岩場に『封印の洞窟』があります。洞窟の中にドラゴンを封印した岩があるのです」


 洞窟か……。ダンジョンじゃないよね。

 ……っていうか、なんでそこまでわかるの? だれか行ってきた?


「鷹の目がありますから」

「鷹の目?」

「はい、文字通り鷹です。魔法をかけて鷹の目に映ったことを、同じようにこちらでも見ることができるのですよ」

 ドローンですか。魔法、すげー。

「一週間でシベルチと往復できます」

 鷹、すげー。


 ……ん?

「だったらその鷹に爆弾でも積んで、ドラゴンに落としてきたらやっつけられるんじゃないですか?」

「……爆弾とは?」

 火薬がなかったー!


 魔法なんて便利なものがあれば、テクノロジーなんていらないものね。爆発させたければ火や雷を使えばいい訳で。ある意味、文明の停滞だな。

 説明するのもめんどうくさい。テキトーにごまかしておいた。


「封印するにしろ討伐するにしろ、やるのは勇者ですからね。殿下が行かないことには話になりません」


 えー、ならば。

「魔法で一気に洞窟に行けないんですか」

「残念ですが、それは無理です。魔法使いが自分だけなら移動はできますが、それもそんなに遠くまでは移動できません。瞬間移動は非常に高度な魔法なんですよ」

 どこでもドアはなかったかー。


「ご期待にそえなくて、もうしわけありません」

 マリアが縮こまってしまった。

「いえいえ、こちらこそ無知ですみません。もっと勉強しなくちゃいけませんね」

 そう言ったら、ますます小さくなってしまった。ほんと、もうしわけない。

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