棘(おどろ)明かし

シバカズ

棘明かし

 棘とは、綺麗な花にはとげがある。というように「棘」は「とげ」と読む。

 しかし、もう一つ読み方がある。それが「おどろ」、意味は草木やいばらなどが乱れ茂っているところ。

 学園初等部の1年1組に幼稚部で仲の良かった4人が入学してきた。

 幼稚部では自身の健康、周囲との人間関係、言葉での感情表現など、主に個人の特性を把握し伸ばすことが教育方針であった。

 それが初等部になると、ひらがな・カタカナ・漢字の読み書きや足し算・引き算といった計算問題を解いていかなければならない。

 よって以前より遊ぶ時間が削られ、それが学習に当てられるわけだが、ナズナは算数に苦戦しているようであった。

 見兼ねた紅葉くれはが親切心から教えようと声を掛けるが、そっぽを向かれてしまう。

 ナズナにはある隠し事があり、他の3人のうち、特に紅葉にそれを知られるのは不味かった。

 ナズナの右腕には炎症の痕が残っている。ナズナはそのことを同じクラスになった紅葉に悟られまいと、以前より紅葉と距離を置いて、無意識の内に冷たく接していた。

 紅葉はなぜナズナが自分を避けるのか見当がつかず、小町こまちに相談していた。

 しかし、気さくな性格でナズナに直接尋ねた小町にも原因は教えてくれなかった。

 故に初等部に入り、ますます読書家となった里本りぼんに助力を求めた。

 里本は3人を学園図書室に招き入れ、奥から植物図鑑を引っ張り出し、3人に読むように進めた。

 紅葉と小町には里本の意図が不明だが、ナズナは里本に驚きの眼差しを向けていた。

 紅葉と小町が読み進める中、あるページで里本はストップをかけた。

 そこにはウマノアシガタという黄色い花が載っていた。

 里本はナズナの制止を振り切り、紅葉にこの花に見覚えはないか、と問う。

 ——紅葉は思い出した。幼稚部最後の遠足でんだ花であることを。

 紅葉と里本は当時同じ組であり、ナズナと小町とは別行動をとっていた。

 遠足の途中、紅葉が黄色い花を見つけて言った。かわいい花だからナズナに摘んでいってあげよう、と。

 その時の里本は知らなかった。その花には毒性があることを——。

 後日、初等部に入り、この図鑑を見た里本は真っ先にナズナの腕を確認していた。

 ウマノアシガタの毒性は、葉や茎などから液が付着することで赤く発泡し、皮膚炎を起こしてしまう。ナズナの右腕にある炎症痕はその名残なごりであった。

 この花の記述を読んでいた紅葉は泣きながら謝り、小町はナズナの我慢強さを褒め称えた。

 感情表現が苦手なナズナはあせりと照れと里本への立腹で、思いのやり場に煩悶はんもんしていた。

 里本はナズナの視線からお怒りを察すると、さっさと植物図鑑を書棚に戻しに行った。

 ひとまずこれを機にナズナをおおっていた棘は解明され、翌日には紅葉がナズナに算数を教える光景が小町と里本の前にあった。


                    完

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棘(おどろ)明かし シバカズ @shibakazu63

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