天気魔報士
大森六
第1話 天国と地国
「ラナ。今からエラーズ村に雨を降らせてやってくれぬか?」
「いいよ。テムじいちゃん。任せて!」
ラナが目を閉じてエラーズ村一帯の気の状態を読む。
「う〜んと……あった。あの《雨気》を使うね!」
ラナが唱えるとエラーズ村に雨が降り始めた。
「感じるわ。雨が降り始めたよ! 村の人たち喜んでいるかしら? テムじいちゃんは……どう?」
「ワシは…………ダメそうじゃな……今回も光のお迎えは来ないようじゃ」
「……そっか……でも、またいつでもお手伝いするよ!」
「ありがとうな。ラナも早くお迎えが来るといいな」
ニコッと笑ってラナは天空の大地を元気に走り出した。
「モック! どこ? 今日も【クラウ
ラナの声に反応して地面からモワモワっと現れた
『ラナ、お前本当に懲りないよな……どれだけ進んだって同じことだって。クラウ土は永遠に続く天空の大地なんだから』
「確かに私たちは今までクラウ土の先端を見たことがない。だからモックの仮説が今の所正しい。でも今日見つかるかもしれないよ!」
『またそれかよ……まぁ、暇だからいいんだけど。ラナは本当に飽きないよな……』
ラナはここ
人は地上での生涯を終えて魂が天へと昇る。そしてはるか上空で太陽(神)の恵みを受けて新しい生命へと姿を変え、再び地上に生まれる。こうして魂は永遠に引き継がれていく。
しかし、前世での思念があまりにも強かったラナたちのような魂は思念体となり、天国で精霊化して残ってしまうのだ。《生まれる》よりも《生き返る》という表現の方が正しいのかもしれない。
ただ、それもピンと来ない理由がある。彼ら精霊たちは前世での記憶がほとんどないのだ。ただ一つ、魂が
ラナかどうかはわからないが、なんとなくラナだと魂が囁く。
『それにしてもラナはなんでそんなに重いんだ?』
「ちょっとモック! 精霊美女に対して失礼よ!」
『だって、他の精霊はみんなこのクラウ土の大地を浮いて移動しているのに、お前だけ二本足で走ってるよな。重力感じてる精霊ってお前だけだろ』
「う〜ん、そこは私もずっと謎なんだよね〜」
走りながらラナは考える。
「ひょっとして、私はまだ人間なのかしら?」
『いや、それは無いだろ』
「あ! あの精霊さん、天に昇ってるよ! 太陽の恵みを受けてる!」
「あ……私がついに……生まれ変われる……神よ……ありがとう」
老人の精霊が涙を流しながらゆっくりと光の中へ取り込まれていく。
『行っちゃった……いいなぁ』
ボソッとモックが
暫くの間、立ち止まって行方を見届ける周囲の精霊たち。何かのきっかけで前世の思念に
しかし、前世の記憶がほとんどない精霊たちにとってそれは難しい要求だった。
再び走りながらラナが考える。
(私の思念への報いには【天気】が大きく関わっているはず……なぜだかわからないけど、前世の私にとって重要だった気がするのよ……だから他の精霊にはないこんな力が……)
ズボッ!!!
「……へ? ちょっと! モック助けて!」
『え? あ! お前! 俺の尻を
「「うわぁぁ!!!!!」」
なんと、クラウ土に小さな穴が空いていて、ラナが見事にハマってしまった。
『おい! ラナ、手を離せバカ! やばいって!』
モックの体を掴んで離さないラナ。二人でズルズルと沈んでいく。
「モック……やば……お、お、落ちちゃ……ウワァア!!」
そして……ラナとモックは
とても精霊とは思えないほどにしっかりと重力を受けてスピードにのって落ちていくラナと道連れにされたモック。
そしてラナは落下しながら色々と新事実を発見し、興奮していた。
「そうか……これがクラウ
『おい! 何をスカッとした顔してんだよ! 下見ろ! 下!』
「え? ……ヤバ!!!」
ドドーン!!!!
絵に描いたように地面へ落下し、深い穴を開けてしまった。
「うぶぶぶぶ! うぶぶぶ!」
『イテテテ……って、痛くねぇか。一応精霊だからな。無傷だよな』
泥まみれのラナを無視して浮き上がって先に地上へ脱出するモック。
「ブハァ〜! もう一回死んだかと思ったわ!」
『ラナ! なんで俺を道連れにすんだよ! それでも精霊か!』
「ごめんごめん、一人で落っこちるの寂しいからさ!」
怒りがおさまらないモックを
「畑? すごく痩せた土にほとんど成長していない作物……」
すると、一人の女の子がラナたちの元へ恐る恐る近づいてきた。
「あっ。
『冗談言ってる場合かよ。どうする? 逃げるか?』
「あ、あ、あなたたちは誰?」
震える声で小さな女の子が話しかける。当たり前だが明らかに怖がっている。一人は見たこともない服装に泥まみれで笑っている若い女性。もう一匹? は雲みたいな喋る生き物なのだから。
「私たちは怪しい者じゃないわ! 天国から落ちてきただけで無傷だから。安心して」
『その言い方! 色々怪し過ぎるからやめろ!』
「なぁんだ! 天国から落ちてきたのかぁ。びっくりしたぁ」
『いや、納得するの! 俺、雲の形して浮いてますし、喋ってますけど!』
「天国のお姉ちゃんとクモちゃん、ようこそ! ここはポポロ村よ。私はピピだよ」
ピピは笑顔でラナたちを迎えてくれた。
『俺はモック。こっちはラナだ。よろしくな!』
モックに懐いて離れないピピ。フワフワの
「ねぇ、ピピ。この辺りの畑はいつ作物を収穫するの?」
「それは……もうすぐかな……」
『もうすぐってお前……この状況で採るものあるのか?』
「ごめんね。私たちが落っこちてあんなに穴を開けちゃったから余計に……」
「いいんだよ……多分今年も野菜とれないから……」
『そ、そっか……』
周囲の育たない畑、太陽が見えない曇った空、そして活気のない村……
「……なんか、私……この村を知っているような気が……」
「着いたよ! ここがピピの家だよ」
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