第2話 レモンを絞って
君に出会ったあの日のこと、ずっと覚えてるんだ。
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四月。新しい学年が始まってすぐ、弟がお弁当を忘れた。
一つ下の階。私も少し前まで使っていた二年生のフロア。
廊下には自己紹介カードが掲示されていた。
素敵な名前の人がいるな、と横目に見ながら弟の教室へ向かう。
弟はD組だった。
「失礼しまーす。
そう言って、教室の中を見渡す。
佑都の姿が見当たらない。
アイツめ、教室にいろって連絡しておいたのに。
わざわざ遠いクラスに届けにきたので、すぐに渡せるところにいないことに少し腹が立った。
「あ、姉ちゃん!」
後ろから声をかけられた。声をかけたのは佑都だった。
__驚いた。
佑都の隣には、私のドンピシャタイプの男の子が立っていた。
あれ、いつも佑都になんて返事をしていたっけ?頭が回らなかった。
「う、うん…佑都、お弁当…」
「出た、姉ちゃんの人見知り。」
佑都にツッコまれて、少し恥ずかしかった。
私は昔からそうだった。
仲のいい友達と話していても、1人知らない人が入ると、上手く口が回らない。
コミュ障、なのだ。
その上、タイプの男の子が隣に立っているのだ。普段通り話せるはずもなかった。
「コイツ、俺の友達の
佑都が隣の彼を指差して言った。
「弟がお世話になってます。姉の美怜です。よ、よろしくね…。」
「律、聞いた?今の。姉ちゃん、マジコミュ障でさ。
知らない人と喋るの下手くそなの。いつもこの倍くらい喋るんだけどな。」
佑都があんまり私のことを暴露するようだから焦った。
「佑都、余計なこと言わないで。ごめんね、律くん。こんなこと言われても反応に困るよね!」
「いえ、僕も人見知りなので…言葉が出てこないって言うか。そういうの、わかります。
あ。こちらこそ、よろしくお願いします。」
共感してくれて、少し安心した。
笑われていたら、恥ずかしさで逃げ出していただろう。
それにしても、丁寧な喋り方をする。良い人だな、と思った。
「じゃあ、私はこれで。佑都、もうお弁当忘れないでね。次は届けないから。」
「はいはい、わかったよ。ったく、俺だってたまたま忘れただけだし…」
佑都がブツブツ文句を言っているのを横目に、私はその場を去った。
「また会えないかな、律くん。」
教室に戻る途中。無意識に独り言を呟いていて、自分でも驚いた。
あぁ、惚れてしまったみたいだ。
これじゃあまるで面食いじゃないか。
だけど、彼が私のことを好きになってくれるはずがないこともわかっていた。
二年と三年なんて、会える機会がないからだ。
叶わぬ恋。
自分がする時が来るとは思っていなかった。忘れてしまおう、辛くなる前に。
…そう、思っていたのに。
「あれ、美怜先輩…ですよね?」
また会えたの、運命かな、なんて。私はロマンチストなんです、神様。
しまっていたはずの一目惚れは、もう無い物にはできなくなっていた。
レモンスカッシュとカシスオレンジ 氷凪ユウイ @yu_lo-o4
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