月妖風仙──つきのあやかしかぜのせん──

はお

     

 山間に開けた小さな街。満月にあと一夜の月が南の空高く昇っていた。

 その月を背に、駅ビルの屋上のフェンスに腰かけている少年がいる。隣には長い黒髪を風に吹かせた少女。

 少年の年齢は高校生ぐらい。カーゴパンツにパーカー。少女は十かそこらに見える。白いシャツワンピースの上に白いざっくり編みのセーター。

「ざっと見、怪しい気配はいくつかあるけど」

 山の下に広がる街に目を細めたあと、少年が少女に向かって首をかしげる。片方の耳元で雫の形の金色が月の光をきらりと弾いた。

「いつも通り、ひとつずつ確かめていくしかあるまい」

 少女の言葉に、少年が唇の端で笑う。

「当たりがあるといいなあ、師匠」

「まったくじゃ」

 うなずいて、少女は少年の肩に手を置いた。少女の姿が消え、黒い猫が少年の肩に現れる。

 少年が軽やかにフェンスの上に立ち上がった。

「いくよ、師匠。しっかりつかまっててね」

「誰に言うておる」

 月明かりの中、少年と猫は宙に跳ぶ。

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