亡霊の軌跡

@miaduki_0109

第0話 噂のハンター達

 かつてある国の中枢として、人が賑わい活気があった繁華街。


 だが、モンスターのなかでも特にキモいと恐れられている空飛ぶ虫の怪物。

〈ラムク〉が初めて出現した場所であり、今は砂漠のようにサラサラとした黒い砂が建物の残骸を覆い尽くして広がっている。

 そして、その廃墟の物陰に高速で駆け抜ける大小の影が3つほどあった。

 

 そのうちの一際大きい影は、何やら蚊とハエのキメラのような形をした空飛ぶ大きい虫だった。

 

 そう、特にキモいと言われている〈ラムク〉である。

 

 ブーンと羽が共鳴する音が静かに響き、風のごとく速さで空を翔ている虫。

 だが、その腹部には奇妙に紫色に光る短剣が突き刺さり、

 毒のようにジワジワと黒く侵食していて、その部分から緑色の血が滴っていた。

 そのせいなのか若干体がふらついていたが、速いことには変わりなかった。 

 

 そしてそれを同じような速度で追いかけているのがフード付きの黒マントを被った人間二人組だった。

 1人はその手に、炎のように赤く光る両手斧を持ち、

 もう一方は両手に追いかけている虫に刺さっていた短剣を持っていた。

 

『ごめんなさい、ルアちゃん。

 そっちに行っちゃったわ。』

 

 と両手斧を持った人間が胸元にある灰色のペンダントを、

 何もを持っていない方の手で触れながら少し色っぽい若い女性の声で話しかける。

 『すまねぇ、一匹仕留めぞこなった。』

 もう片方の片手剣を持つ人間も悔しそうに青年の声でペンダントに向かって声を放つ。

 そしてその直後、灰色のペンダントが光を灯し、向こう側で話し合う女性たちの声が聞こえる。

 

 『おっけ。…ジル、視点と大体の目標の位置渡すね。

 まだ打てそう?』

 『う、ん。ここからなら、うて、るよ。

 魔力、も、まだ一発ぐらい、なら、うてる。』

 『そっか。あ、そうだ2人とも、ちょっと離れ』

 

 と、片方の女性が言い切る前に爆音が聞こえ、

 その音と共にこの2人が追いかけていた虫が爆発し、弾け飛んだ。

 正確には、刺さっていた紫色の光を放つ奇妙な短剣に何かが命中し、その反動で短剣が爆発したのだが。

 追いかけていた二人組の黒マントは一歩避けるのが遅れ、緑色の血でベッタベタに染色されていた。

 

 そうして3拍ほどおいた後、灰色のペンダントから先ほどの女性の1人が恐る恐る言葉を発す。

 『……え〜、と。無事?』

 『大丈夫に見えるか?てめぇ。』

 『ルアちゃ〜ん?確かに、私たちが〜仕留め損なったのは反省してるわよ?

 だ・け・ど、年頃の乙女にこの仕打ちはちょっとアレなんじゃないかしら?』

 とペンダント越しから聞こえる女性の声に黒い殺気を出しながら、

 どこかへ向かう緑色に染まった2人。

 

 『い、いや…そんなつもりはなかったよ?

 ほ、ほら。二人なら、これぐらい避けれると思…

 すみませんでした。』

 と、緑色の血でずぶ濡れになった2人に、ペンダント越しに責められるルアと呼ばれた女性は、

 だんたん声を小さくしながら、声だけでもわかるぐらい萎縮していた。

 

 そして、おそらく何かを短剣に当てたであろうもう1人の少女は

 『ご、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!!!』

 と声だけでもわかるぐらい、頭をブンブンと下げている様子がわかる。

 

 そうしている間に、先ほどから結構距離が離れている場所に数秒で到着した二人組は、

 黒い砂で染まった高台に自身の足の力で飛びながら登った。

 そこにはこの二人組と同じ黒マントを被った小柄な人間と、

 その小柄な人間よりひとまわり大きい人間がいた。

 

 しかも、そのひとまわり大きい人間は高台の端で萎縮しており、

 小柄な人間は大きな狙撃銃を抱えながら尻をついて怯えていた。

 

 だが、緑に染まった二人組がこの奇妙な2人組に啖呵を切ろうとした直前、

 「あれ?2人とも。

 その格好どしたの、どしたの?」

 と緑に染まった二人組のまわりを少年のように、

 ぐるぐると回り話しかける少年のような声と身長の人間。


 「あっれれ〜?2人とも、僕たちに今日は勝つって言ってたのに〜。」

 「私たちよりも、倒す数少ない上に、ジルに手伝ってもらうなんて。」

 「「いっけないんだ〜」」

 と声も図体も同一人物のように思える小柄な人間2人は、

 緑の…いや、あの二人組を煽り。


 「2人ともからかい過ぎだヨ。

 あとが怖いんだヨ。」

 分身のように思える小柄な人間2人が煽っているのを仲裁する、

 中性的な声をしている少し言い方が独特な人間。


「というよりも、あなたたちさっさと着替えなさい。

 臭くて仕方がないわ。」 

 しっしと2人を手を払うように促す、きつい口調の女性。

 

 と、無言でふわふわと宙に浮きながらきつい口調の女性の後ろをついてくる人間。

 

 突如現れた6名の同じ黒マントを被った人間たちが、あの二人組が来たのとは別方向から、わらわらと集まってきていた。

 

 して、このなんとも仲が良さそうで個性豊かな10人の人間たち。

 特に今は先ほどの虫の血によって、情けない姿になっている二人組だが。

 この二人組の身体能力は人間とは思えないほどに卓越している。

 

 そして情けない姿にした張本人である狙撃銃を持つ小柄な人間は、

 約5Km離れていた高速で動く虫に刺さった短剣に弾を命中させていた。

 

 ちなみにだが一般的に、狙撃銃で打てる最高範囲は3kmとされている。

 そんな人間ではできない所業を難なく成し遂げているとは、個性豊かな彼らを見れば想像できない。

 

 しかも、だ。

 先ほど、いろいろあったが討伐したあのキモい虫は。

 この世界に突如として出現するモンスターの中で定められているランク。

 一体現れるだけでも国を1日かからずに滅ぼせるほどの天災カラミティーに匹敵するモンスターである。

 

 しかも、このモンスターはあの一体だけでなく、当初は約21体ほどいた。

 だが、それを誰もが頭上に掲げるはずの、魔法の証たる“角”すら見せず、

 約30分ほどで天災を蹂躙した彼らは、異常な存在と言えるだろう。

 

 さて、この者達は噂が絶えず、だが誰もその正体を知らぬとされており、

 どこのクランにも所属していない謎の団体。

 

 その名も《レヴナント》。通称亡霊

 

 パーティーランクは最上位の”セラフィム”だとされており、唯一、天災以上に匹敵するモンスターを討伐することが可能だと言われているランクに属している。

 つまり、単純に言えばとても強いのだ。

 しかも、ハンター業界に名を表してから約1年足らずで最高ランクセラフィムに認定されている。

 

 コレは、歴史上今まで誰も成し遂げたことがない快挙であった。

 現在Sランクと定められており、

 とても速いと言われていたパーティーでも、約5年はかかっているのだ。

 

 だがそんな《亡霊》と呼ばれる彼らの姿を見た者はいなく、

 本当に実在しているものなのかと噂されるほどに表に出てこないパーティーでもある。

 だが、何度も天災ランクのモンスターを討伐しているため、実力は認められているのだそうだ。

 

 噂では《亡霊》は名簿によると約10名で構成されているらしい。

 が、コレが本当のことかは誰も知らない。

 だが、こんな不可解だらけの彼らに一部の者たちが口を揃えていうことがある。

 

 ””容易に亡霊を探してはならぬ。認識してはならぬ。狩ってはならぬ。

  さもなくば、死神が其方の魂を刈り取るであろう。

  我らを救ってほしくば、厳守せよ””と。

 

 脅威のセラフィムと定められ、異才を放つ彼らだが。

 彼らはハンターになることを夢に抱いてきた者たちではなく、それぞれハンターとは無縁の生活を送っていた。

 

 ある者は、生まれながらに”呪い”を持ち。

 ある者は、優秀すぎるが故に存在そのものを否定され。

 ある者は、異端者と言われながらも自身の好きを追い求め。

 ある者は、他者の罪を背負い。

 ある者は、自身の輪廻から逃れられず。

 ある者は、重すぎる期待を託され。

 ある者達は、唯一の肉親を殺し。

 ある者は、自ら禁忌の道を進むことを決意し。

 そしてあるモノは、自ら道化となることを選んだ。

 これは、さまざまな過去と個性を持つ10名の者達が巡り合い、”亡霊”となるまでを書いた日誌である。


 …さて。話が外れるが、いつまで現在の彼ら亡霊は言い争いを続けているのだろうか…

 本当に、仲良しだ。

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