斬撃の描写が異常に上手い。
鞘鳴りの一音だけで殺しが完了する序章の設計が、この作品の格を決めています。普通、剣戟は斬った結果を書く。この作品は斬る前の音を書く。だから読者は、音が鳴った瞬間にもう死体を想像している。
主人公の造形が正しい。斬ることしかできないを自嘲でも誇りでもなく、ただの事実として差し出している。師匠の「抜くかどうかではない。どこで抜くか」が作品全体の背骨になっていて、狭間での戦闘がその回答になっている。教えが物語の中で実践として回収される構成が美しい。
死んだふりの話。小鳥が掌で冷たくなる記憶から、勇者ごっこに混ざれない子供時代、脈を数える癖へ。この流れだけで、治癒者という職業選択の必然性と、彼女がなぜ迅の手首を離さないかが全部繋がる。説明なしで人間が立ち上がっている。
四人の役割分担が台詞の温度で分かる。盾持ちは短く、黒衣は乾いて、白衣は震えて、迅は黙る。地の文での呼称を「盾持ち」「黒衣の女」「白衣の女」で通しているのが効いていて、名前が出る瞬間に距離が縮まったとわかる。「泣くな、エルネ」の一行が重いのは、そこまで名前を呼んでいないからです。
続きも読ませていただきます。