MONSTA
@Try_Shosetu
第1話 憧憬
この世界には、いつからか【怪物】という存在が蔓延っていた。
それは、もはや災害と形容してもおかしくないもの。”死の霧“という毒性気体を撒き散らし、圧倒的な力と異能で、社会を蹂躙するもの。姿形はさまざまで、形容できないような形をするものも多かった。
だが、人間社会はそれに対して黙っているわけではなかった。
対怪物組織「レジスタ」
政府公認のもと、全国に支部を持ち、対怪物の最前線を走る組織だ。
そこは、日常を守る事に、命を懸ける人達が集まる場所。
怪物は、もはや一般化した脅威となった。
だから、それに対抗するレジスタもまた、社会の一部として受け入れられていった。
支部や本部の場所は徹底的に隠蔽されている。
が、隊員の姿は、メディアや現場で目にする事もある。
だから、あの制服に、誰もが一度は憧れる。
その背中を追いかけたいと、夢を見る。
_______ほんの一瞬だけ。
けれど、実際にそれをしようと思う人は多くても、99%の人はできないのが現実。
なぜなら、レジスタの門は、残りの1%の人々___
“命”を懸ける覚悟と、それに見合う“強さ”を持つ人にしか開かれない。
つまり、“一般人”には到底無理な話ということだ。
●
僕には、歳の離れた兄がいる。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群。
何をしても優秀で、更に周りから好かれる人格者だった。
だから、兄が“レジスタ”に入隊できた時も、あまり驚かなかった。
お兄ちゃんなら、レジスタでも最強になるんじゃないかな。とか、
僕の兄はすごいな。とか。
そう、楽観的に考えていた。
兄が、片足を無くして家に帰ってくるまでは。
「ごめんな。兄ちゃん、任務でヘマしちゃって。」
「......。」
帰宅した直後から、僕は兄のそばを一時も離れなかった。
兄は、少し困ったように笑った。
「兄ちゃん、もうレジスタ戻れないからさ。いっぱい遊んであげられるよ。」
嬉しそうな顔をして、兄は僕の頭を撫でる。
でも、その瞳からは寂しさと悔しさが垣間見えた。
僕はそれを、10年経った今でもずっと覚えている。
●
僕は、レジスタに憧れている。
けれど、拒絶もしている。
矛盾だと思われるだろうけど、それも仕方ない。
幼い頃からの憧れの場所であり、大好きな兄が進む事を選んだ道。
でも、その大好きな兄の輝かしい人生を閉ざした場所でもある。
正確には、そのレジスタが討伐している“怪物”を恨んでいる。
が、レジスタを恨んでいるのも嘘じゃない。
兄はどんな状況で怪物と戦わされたんだ。
なんで優秀な兄が、こんな怪我をする羽目になったんだ。
兄が___兄が_____。
考え出せばキリがなくなってしまう。
もちろん、悪いのは”怪物“だ。でも、レジスタにも原因の一つや二つくらいきっとあるだろう?
それを、絶対に突き止めてやると思った。
その夜。
「僕も、レジスタに入る。」
と、兄のあの瞳を見た日の夕食。
家族団欒の場で、高らかにそう宣言した。
両親には、強く反対された。
それもそう。兄が片足を無くした組織なんだ。
その兄より不出来な弟を行かせられるわけがない。
たしか、その当時僕はまだ小学一年生。
その歳での入隊なんて絶対に無理である。
ただ、兄は僕の”夢“を否定しなかった。
「なんで、入ろうと思ったんだ?」
兄は、いつもの優しい顔でこちらを見ていた。
「......ずっと入りたいって、思ってた。」
「そうか。」
「でも、でも。兄ちゃんが怪我して帰って来た。」
「......そうだな。」
「だから、すごく迷ったんだ。兄ちゃんが怪我するようなところに、僕が入れるのかって。」
兄は静かに、僕の言葉を待っている。
「でも、だから、僕が入らなきゃと思った。」
「兄ちゃんは、”みんなを守るため“にレジスタに入ったって言ってたから。兄ちゃんの夢、なくなっちゃう。」
「僕が、兄ちゃんの夢を叶えてあげたい。」
強く、そう言い切る。
兄の瞳を見据えて。
「______ダメ、って言いたいけどなあ。」
兄は、一度目を伏せてから、困ったような顔をこちらに向けた。
「兄ちゃんの夢、覚えててくれたんだな。嬉しいよ。そして、それをお前が叶えようとしてくれるのも、めちゃくちゃ嬉しい。」
「でも、本音を言うと、あそこに行ってほしくない。」
「_______。」
大きく息をのむ。
「......でも、兄ちゃん知ってるんだ。お前は、一回強く決心したら、絶対にやり抜くって。」
「兄ちゃんはお前が大好きだからさ。行ってほしくないけど、夢を叶えて欲しいとも思うんだ。」
「つまりだな_____兄ちゃんが色々と教えてあげるから、入隊は、もっと先にしよう。それなら、良いよって言える。」
「____!」
僕は、兄に反射的に抱きついた。
その人物は、”戦士“でも“英雄”でもなく、紛れもない“僕の兄”だった。
そして10年後。僕は試験会場に立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます