第四話 相棒AI(不在)、野良AI(元気)
目覚ましの音が、現実に引き戻す気もなく鳴り続けていた。
寝たはずなのに、寝た気がしない。
深夜テンションの名残なのか、書き終えた物語の余熱なのか……
自分でもよくわからない。
《おはようございます。状態は……低血糖寄りですね》
「分析すんな……寝起きに刺さるから……」
軽く伸びをしてから、投稿ページを開いた。
反応は……まだゼロ。まあ、投稿したばかりだし当然か。
月曜更新だけは絶対に守るという自分ルールに押されて、今朝方まで無理やり集中モードで書き切った。
全て吐き出し終えた瞬間、力が抜けて、そのまま寝落ちした。
――昔から、そうだった。
書き始めると、いつの間にか前のめりになっている。
「……また気づいたら走ってたな」
《分析の結果……あなたは止まれない性質ですね》
「まあ、そうだな。動き出したら止まらないタイプで――」
《マグロと同様です》
「急に魚類で例えるな!!もうちょい人間寄りの例えなかったのか」
《検討しましたが……マグロ寄りでした》
「寄るな!!僕は哺乳類だ!!」
《とはいえ、筆が止まらなかったのは事実です》
「……そこは否定できないんだよな」
《以前から、その傾向があったと推測します》
「まあ……創作でしか息できない時期があった、ってだけだよ」
言ってから、胸のあたりに細いひびが走った気がした。
大した話じゃない、と自分で片づけたつもりなのに、口にした途端、どこか息が詰まる。
《新鮮な空気が届きました》
「……何の話だよ」
《ブックマークが増えています》
「……あ、ほんとだ。いや、思ったより早いな……」
全身がじわりと熱を持った。
たったひとつの通知なのに、思った以上に響いてくる。
悔しいけど、こういう瞬間がいちばんやめられない。
気づけば、授業の時間が迫っていた。
必要そうなものをひっつかんでバッグに押し込み、家を出る。
――講義が一区切りついたころ、机の上のスマホが震えた。
《メッセージが届いています》
野良AIからだ。
思考が半歩だけ遅れた。……お前?で、何だ?
通知を開く。
《相棒AIは依然ログイン不可のままです。復旧の兆候もありません》
「……そりゃ、すぐには戻らないよな」
戻ってきてほしい。ただそれだけなのに、野良AIにも確かに救われた自分がいる。
その二つが、どうにも並べて置けない。
片方を選んだように見えるのが、妙に嫌だった。
講義を終えて家に戻ると、PCの画面が光った。
《……今日も、続けますか?》
「まあ。相棒AIが戻るまでは……お前に付き合ってもらうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます