第49話
「何度も申し訳ないんですけど、どうか忘れてください。村にいた時の俺は全てが悲惨なんです」
「私はそんな風に思ったことは一度もないんだけどね。……でも、そういうものかもね。皆が皆、過去の自分を好きとは限らないか」
そう言う宗一さんは、過去の自分を好きなんだろうか。ちょっと気になったけど、急に腰を引き寄せられてバランスを崩した。
「わわっ……」
「さて。踊りも見せてくれないということだし、お姫様をさらって何処か行こうかな」
宗一さんはサングラスをかけ、車のキーをとった。
「お出掛けですか?」
「そう。またの名をデート」
あくまでそういうことらしい。意識させようという魂胆が見え見えだ。
でも、外へ行くのは素直に嬉しい。少し厚手のジャケットを羽織ると、キャップも頭に被せられた。
車に乗り、シートベルトを閉める。
今日もすごく良い天気だ。窓を開けていいか尋ねると、彼は自動で助手席の窓を開けてくれた。
風を切る音が強くなる。
結構遠くに行くんだなぁ……。
もう、高速道路に入ってから一時間以上経つ。何となく行き先を訊くのは憚られた。宗一さんは楽しそうに運転してるし、俺は俺で、少し酔いそうになったからだ。
具合が悪いなんて言ったら、秒速で帰ることになりそう。せっかく彼と出掛けられたんだから、一秒でも長く外に居たかった。
「あ、サービスエリアで休憩して行こうか」
た、助かった……。
「運転お疲れ様です。すみません、俺ちょっと先にトイレに行かせていただきます……」
少し首がガクガク揺れてしまったけど、駐車場に着いてすぐ、足早にトイレへ向かった。
胃の中のものを全て戻すという最悪の事態は防げたけど、宗一さんより先に入ってしまったから、外へ出てひとりになった。
はぁ~、すごい。
たくさんの車と、行き交う人々。大きなモニュメントや出店、キッチンカーが並んでいる。初めてのサービスエリアは街中とは違う賑やかさがあった。
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