空の下の透明な願い
猫巻団子
空の下の透明な願い《上》
互いの国が疲弊を始めたため、新たな政策に舵を切った
片方は国家の技術をすべて使った
要塞という名の答えを
片方は
罪も
責任も
義務もない
”子供”
人的資源という狂気の選択を
:一章 なんで:
外の音が遠い
雨が降っているはずなのに音が少しもしない
聞こえてくるのはエンジンの低い唸りと、排気口のモーターの音と
同年代
いや、それより幼い子もいる
その子達の泣き声
朝、いきなり軍人が仮宿舎にやってきて、話もせず私の腕を引っぱり、銃口を向けられたままトラックに乗せられた
なぜ、こうなってるのかは少しわかっていた
一昨日にやっていたラジオの放送
国が徴兵制の年齢、性別の解放をして、それに従わないものは
非国民のレッテルを貼られる。
ただ貼られるだけならば良いのだが、その非国民とは言葉の通り
”非”国民
その者は国民ではないから法律など存在しない
だから、それには何をやってもかまわない
そう、放送された
昨日にはニュースで非国民の個人情報が公開された
その後、晒すかのようにラジオで
悲鳴と
銃声と
笑い声
それが何を意味するのかはすぐに分かった
そのニュースを知っていたから少しは冷静で居られる
少しは
本当ならば今すぐに誰かに泣きつきたいとこだが
あいにく親も頼れる人も戦争に行ってしまったから
―――
数分したところで、トラックが停まり、軍人が
いや、もう軍人と呼んで良いのかわからない男たちが銃口を向けながらトラックの後ろの扉を開けた
「おい!ガキども!!」
男は大きな苛つきを持った声で叫ぶ
「ついたぞ!!降りろ!」
そう、男が言ったのだが誰も出ようとしない
足が動かないのだ
慣れていない怒号
それに初めてみる者が多い、アサルトライフル
皆、動こうとしても足が動かない
「おい!!出ろって言ってんだろ!」
「チッ」
男は舌打ちをして近くに居た十歳になるかどうかわからない少女の髪を持ち、上に見せしめのように掲げた
「痛いっ!!」
「お前ら早く動かねぇとこうなるぞ!!」
少女の頭に黒色の鋼の穴が向き、その次の瞬間
パン
軽い破裂音がして
火薬の匂いがトラックの中に広がり
車内のすべての雑踏が冗談のように
消えた
男は持っていた”もの”をそこら辺に投げ捨て、再度叫ぶ
「従わねぇやつは非国民だ!!さっさと出てこい!!」
息が吸えない、怖い
自分の胸の音が雨の音や、周りの泣き叫ぶ声よりもうるさい
足が動いてくれない、誰も助けてくれない私もああなっちゃうの?
「大丈夫?」
後ろの方から声がした
その声のした方を見ると同年代ほどの少女
「動ける? ああはなりたくないでしょ。それに、私たちの年代なら……何されるか分かんないよ」
言われたことを想像してしまい、怖くなった私はすぐに立ち上がるがまだ足が動いてくれない
「ほら、私についてきて」
少女が私の腕を引っ張ってトラックから出た
:二章 パーツ:
連れてこられた先は簡易的な体育館のような場所
そこに百人程度の子供が集められていた
「お前らはこれから資源、いわば国家のパーツだ。それになるための訓練を受けてもらう」
子どもたちの前に立った男がよく通る声で言う
少年少女が少しざわつく
「黙って聞いてろ下民、非国民となりたいのか」
この声、聞いたことがある。
ラジオで徴兵制の変更を公に言っていた現帝王
帝王ロウ・ヴァルネスト
すべて自分が良くなるための失敗に終わっている政治をしている
クズだ
「お前らは我の所有物だ、もう自由などない。それだけを心に刻め」
帝王がカツンと足で地面を踏み、周囲を威圧し黙らせる
「黙れ、騒ぐな、動くな。お前ら下民は言われたこと以外するな。今許可するのは呼吸のみだ」
もう一度足で地面を踏んだ瞬間にはもう、誰も一言も発せていなかった
「これから、お前らパーツ十個に一つ、専用の訓練教官をつける。それに従え、抗うなど考えるな」
ハッと横に並んでいる軍人が胸に手を当て敬礼をする。
「ふざけんな!!なんでそんな理不尽なことがゆっ」
一人の少年が声を上げ反抗の狼煙を上げようとした瞬間
言い終わる前に少年は後ろに倒れた
前に立つ、帝王はハンドガンを構えた状態で固まる
そのハンドガンからは煙が立っている
「立場もわからない馬鹿が一人いたようだが、そんな事どうでもいい。それより、早くそのパーツどもを連れて行け、下民ども」
「よろしく、俺はみんなの訓練担当のヴィーゴだ」
あんな事があったのだ、訓練担当もクズだと思ってたら思ったよりも若い弱々しい青年が出てきた
「ごめんな、みんなと同じ年ぐらいなのにこっち側に立っちまって」
謝られる方がイライラするのだが
「よろしくお願いします、ヴィーゴ教官」
すると、ヴィーゴの周りにいた十人の子供の中の一人が話した
先のトラックで手を引っ張ってくれた少女だ
「なんで、あんたそんな冷静なんだ?」
その少女は淡々とヴィーゴに話す
「別にあなたに恨みはないので」
そう、別にこのヴィーゴという青年にはなにかされたわけではない
先の集合での帝王の行動、言動で全員縮こまってるだけだ
「私は凛、よろしくおねがいします」
「あぁ凛、よろしく。すまない他の人も自己紹介してもらっていいかな」
そこで、別のグループから叫び声が聞こえた。
「やめて!!」
少女の声だ、それも震えてやっと出たような情けない
「あの馬鹿、何やってるんだ」
ヴィーゴがそちらを向き、すぐに反応する
「みんなすまない、隣の学校みたいになってる建物の三階の一番東の教室に行ってくれ」
「ヴィーゴ教官はどうするんですか?」
「ちょっとあの馬鹿をどうにかしてくる」
そう言って、ヴィーゴはライフルを肩に担ぎ別のグループの方に走っていった
―――
「みんな、ありがとう。待たせちゃったかな」
「それより、ヴィーゴ教官、その子達は?」
ヴィーゴの後ろには九人ほどの子供がいた
「さっきの馬鹿の子たち」
「その子達の教官は?」
ヴィーゴは迷いもなく後悔もなく話した
「殺した」
凛が固まる
ヴィーゴの後ろにいる九人の子どもたちはヴィーゴを恐怖してるような、どこか信用してるような目をして見ていた
「あいつは味方になる子供を殺したんだ、死んで当然だ」
あぁわかった、ヴィーゴさんが教官になってる理由
教官になってるということは、数年戦場を生き残ってるということだ。
この人はこの決断力があったからこそ生き延びたのだろう
「それより、この子たちも俺のグループに入ることになったからよろしく」
ヴィーゴが教室の黒板の前に立ち、みんなが教室の椅子に座った
「さぁじゃあ自己紹介してこうか、改めて俺はヴィーゴ。同年代だから呼び捨てでも大丈夫だ」
「じゃあ、次凛また改めてお願いしていいかな?」
「えぇ良いけど、名前ぐらいしか言う事ないのだけど」
「名前と、年齢と、あ、じゃあ将来入りたい班とか?戦闘機とか歩兵とか狙撃手とか」
「なんです?嫌味にしか聞こえないんだけど」
完璧な嫌味だ
この人がじゃなくてもお前ら軍隊が私達を縛ってるのに
「あぁすまない、でもゴメン。だけどもう帰れないんだ。それなら夢見てこうよ」
「それは、受け入れろと?そういうんですか」
「まぁそうなっちゃうけど、それしか手はない。もうこの状況は僕ら子供にはどうしようもない」
そうだ、たとえこの人が抗ったとしても逆にこの人がいなくなるだけ
「なら、死に方は選べるってもんよ。そんぐらいの自由しかなくなっちゃんだから」
「はいはい、わかりましたよ。」
じゃあっと凛が立ち上がり自己紹介を始める
「私は霧島凛(きりしま・りん)、十八歳、目標はじゃあパイロットで」
「はい、ありがと、よろしくね凛」
「なんか、そこまで飄々としてくるとキモいんだけど」
「え!?ひどくない?」
「はいはい、じゃあ次の人ってどうせ誰も言おうと思わないでしょ」
「まぁそうみたいだな」
「じゃあ、さっきの子、お願いしても良い?」
そこで、凛がこっちを見た
え?私?
「私!?」
「そうよ、それ以外関わりある人いないもん」
「私もそんなに」
「はいはい、どうせみんなやるんだから。やんなよ」
「わかったよ…」
凛にグイグイ手を引っ張られて立ち上がる
「わ……私は、縁…蒼(えにしあおい)です。十八で目標は…」
目標、なんもわかんない
まず何があるのかすらわかんない
あ、でも凛がパイロットって
「目標はパイロットです!!」
「はい、蒼ちゃん。ありがと」
「ちょっと待て、なんで私にはちゃん付けしないのに蒼にはするのよ」
「え、だって凛しなくて良さそうだし、同い年だから」
「蒼もだったじゃん、てかなに?葵のこと可愛いとか思っちゃったんじゃないの?」
「う」
そこでヴィーコ゚が眉を寄せ嫌な顔をする
「なに?図星だったの?」
「いや、んなわけないだろ、俺は軍人。恋なんてどうでもいいですー」
「じゃあ、なんでそんな耳真っ赤なのよ」
「え!?真っ赤になってんの!?」
「なってるわよ、それもすごく」
そんな話をしていたので、そこにいた他のみんなが笑いだしていきなり温かな空気になった
:三章 家族:
「さぁ、二人とも一応希望を聞いてくれた上が訓練内容を調整してくれましたー」
私と凛が休んでいた仮の自室にいきなりヴィーゴが入ってきて紙を掲げながらそんな事を話す
その時は朝六時、みんなが起き始めてちょうど準備してる時間だ
私達も訓練のために軍服に着替えてる最中
凛は着替え終わっていたが私が思いっきり着替えてる最中
「……っ//」
そう、ちょうどパジャマを脱いだところで、ほとんど裸同然だった
「あ、ごめっ、いってぇ!!なにすんだ凛!!」
そこで、凛がベッドの枕を思いっきりヴィーゴに投げつけた
「あんたのが何やってんのよ!!私の蒼の裸見てんじゃないよ!!」
「それはすまんって」
よっ、と体を起こそうとした瞬間
バタン、と凛がヴィーゴごと扉を蹴って閉めた
「いってぇ!!」
「もう入っていいわよ」
ガチャっと自室の扉が開き、再度ヴィーゴが入ってくる
「あんたせめてノックしなさいよ」
「一応、俺上官だよね?」
「うるさい、プライバシーに上下関係ない」
「まぁ、それは謝るけど、凛お前、さっき私の蒼とか言ってなかったー?」
凛の顔がどんどん真っ赤になっていく
別にそんなに恥ずかしいことかな?
「うっさいわね、また投げられたいの?」
「いや、ちょっとゴリラの攻撃は流石に軍人でも痛いわ」
「よし、蒼こいつ押さえて、次は鉄球でも投げてやる」
「殺す気満々じゃん!!やっぱゴリっ、あぶね!!ばか、ライフルで殴りに来んな!!」
やっぱ二人とも仲いいな、
「蒼何笑ってるんだ?」
「いや、仲いいねって。」
「どこを見たらそう思うのよ」
「どこ見てもだよー」
「「蒼、眼科行こう」」
二人の言うことがきれいに揃う
相変わらずだね
「てめぇ、合わせてくんな」
「凛が合わせてきたんだろ」
「よし、再戦がご所望みたいね。そこ立て、次は鉛玉を食わせてあげる」
この二人の会話はずっと見てて楽しいな
「さぁ、まずは一旦戦闘機の操縦には相当な筋肉がいるからいっぱい運動していっぱい食べよう」
グランドで少女たちの目の前に立ったヴィーゴが言う
「はーい質問ですー」
「おう、どうした凛」
「なんで、私達五人しかいないんですか?」
ここにいるのは私と、凛と、真白と、莉瑠と、紬
綺麗に少女だけだ
「男だけの訓練とかしたくないだろ」
凛がわかりやすくうわって口にして思いっきり身を引く
「まてまて、冗談だ。そんな事しそうか?俺」
「うん、しそう」
「え!?蒼!?」
「ハハ、無様無様」
「凛ちゃんもダメだよ、そんないじめたら」
「え……」
綺麗に笑った顔のまんま凛が固まった
「言われてやんのーってあぶねぇ!!」
凛が表情固めたままヴィーゴの顎に向かって蹴り上げた
「馬鹿野郎!?顎狙って来やがった!?」
「殺す、お前のせいで蒼に嫌われた」
凛の顔に明らかに光がないんだけど、大丈夫かな
「ちょ、ちょ、ちょっと!!蒼ー!!止めて、その馬鹿ゴリラ止めて!!」
はぁ、なんで焚きつけるの
「わかりましたよー」
くるっと凛の方を向いて凛の肩に手を置く
「凛ちゃん、暴力はダメだよ。それこそ嫌いになっちゃうよ」
「え!?」
びくっとした後にすぐにしゅん、と縮こまってしまった
かわいい…
「疲れたー」
「ね、疲れたね。紬さん」
横にいる少女、紬に話しかける
すると、紬さんは首を傾げてしまった。なにか言ったかな?
「蒼、同い年なんだから紬でいいよ?」
「ほんと?」
「逆に嘘のことそうそう、ないでしょ」
「まぁ、そうだね。じゃあ改めてよろしくね。紬」
そんな事を話していた時、後ろからドタバタと走ってくる音と同時に後ろから急に重さを感じた
「蒼!!私のことも凛って呼んでよ」
「それより、重い凛」
「重いはひどくない!?」
「蒼も疲れてんだよ、やめたれ」
後ろが軽くなったと思って見ると、ヴィーゴがネコのように凛の首元を持って持ち上げていた
「ちょっと!!ネコじゃないんだから、離して」
「へいへい、ゴリラだもんな」
ちょいっとヴィーゴが凛を地面に離したが珍しく凛は言い返さない
「珍しい、凛が言い返してこないなんて」
「うるさい!!近いのよ……//」
珍しく、本当に珍しく凛が顔を赤くして走っていってしまった
「なんだ?」
ヴィーゴが首の後ろをかきながら凛が走っていくのを眺めていた
「ねぇねぇ、凛、ヴィーゴさんのこと好きでしょ」
食堂で、本当に強制徴兵されているかわからない会話を交わす
「な……なっなに言ってるの!?」
「だってねー、ね、蒼どう見ても好きよねあの感じ」
「そうだね」
さっきドーソンさん、食堂のおじさんからもらった合成素材でできた鶏肉をあげたものをつまみながら答える
「なわけ無いでしょ……私には蒼がいるんだから」
「じゃあ、なんで顔真っ赤になってるのよ」
「え!?なってる!?」
「うん、すごくなってる」
紬がポッケから小型の鏡を取り出し凛に向ける
「ほら、なってるでしょ」
「いやいや、これは蒼に反応してるだけだから」
早口になってるし、色んなとこを見てる。説得力が何も無いんだけど
「凛は蒼ちゃんを占領しすぎですー」
いきなり左に座っていた真白が私の腕を引っ張る
「え?」
「そうそう、私達にも譲ってよ。こんな人形みたいな子。可愛がるしかないじゃん」
「え…//」
目の前で、なんでそんな事言えるの…
「ね、哨戒作戦中に拾った服とかいっぱいあるし、着せたいのに」
「え?」
莉瑠まで引っ張り始めた。
「ちょ……」
どうしよ
助けて、凛
「あげないわよ、あんたたちには」
凛!
救世主!!
「えーじゃあ、明日夜に行くから色々着させて良い?」
え
「私見ていいなら良いわよ」
え
「ほんと!!じゃあ、明日訓練終わりに二人の部屋集合ね」
わたしの選択肢は……
コンコン
夜八時自室の扉が叩かれたので急いで開けに行くと
「こんばんわ、蒼」
「ヴィーゴさん?」
扉を開けるとヴィーゴが立ってていた
気まずそうに
「私達もいるよー」
ヴィーゴの影から真白、莉瑠、紬
「あ、」
忘れてた、そうだ。
この後地獄が待ってることに
ばたんと、勢いよく扉を締めすぐに鍵をした
「どうしたの?蒼」
「いや、なんか…なんでもない」
その時、ガチャっと鍵が開けられた
「ちょっと!!ヴィーゴさん、合い鍵はずるくない」
「ごめんってちょっと後ろの人達の圧が怖いから」
「はいはい、入れた入れたー」
三人は私を掴み部屋のベッドに無理やり座らせて、いつも着ているブラウスのボタンを外し始めた
「ちょ…//」
「あ、ヴィーゴさんは入口で待っててね」
「あぁそうさせてもらうわ、また凛に殴られたかねぇ」
「ちょっと、待ってよ!」
「なに?蒼」
「私の拒否権は?」
「ないよー」
「はい、一着目は、これ着て」
出されたのは真っ白のワンピース
「可愛い……」
「でしょ!!絶対に似合うから着て」
「そうかなー?」
元々着てた服は真白に持って行かれてしまったから早く着るものが欲しい
「じゃあ、カーテン閉めるから着てね」
この部屋のベッドには虫対策のカーテンが付いてるので紬が出ていきそのカーテンを閉めた
これ結構後ろ背中空いてるし、脇も結構見えるんじゃ、裾も短いし足も結構見える
あれ?これ結構恥ずかしいのでは?
―――
紬達が蒼を脱がしてベッドに放り込んで時間がたったけど一向に蒼が出てこないみたい
何やってんだか、まぁ娯楽が少ないのは俺のせいだし多少好きにはさせるか
数分後、ようやく蒼が真っ白な
彼女自身のような色のワンピースを着て、姿を見せた
恥ずかしいのかいたるところから空気が通る感じが落ち着かないのか
右手で胸元を押さえて、左手でスカートの端を押さえながら内股で立っている
…そっちのがなんか扇情的なんだけど
「ど……どう、かな?」
俺的にはすごく可愛いと思う
まぁ言わないけど、言ったら周りのこいつらになにされるかわかったもんじゃない
「可愛いよー!!蒼最高!!」
「ほんとに可愛い、よし次々!!」
「次!?まだあるの…?」
「まだ、あと二着!!」
「えー……」
可哀想に
蒼はスタイルが良く、顔も小さく整っていて本当に綺麗だ
まるで人形みたいな感じだ。
そりゃ、あんな感じで色々着せたいのはわかるわ
「楽しそうだな、お前ら」
「ちょっと、ヴィーゴさん!!入口で待ってて言ったじゃん」
「うるせ、入口からでも部屋全体見えるわ」
「なにー、ヴィーゴさん。蒼の裸見たくなったー?」
「冗談でもやめて凛にぶん殴られる」
「ねぇヴィーゴさん」
「なんだ?」
さっきまで一番奥にいた蒼がいつの間にか目の前に来ていた
「可愛い?」
「は?」
俺に聞く?
そりゃめっちゃ美人だし、服がよく似合っていて可愛いけど…
俺、これ言い方ミスったら殺されない?
目の前でなんの悪気もない蒼がモジモジしながら聞いてきている
その後ろでスッゴイ圧の4人
まずいね、これ
普通に戦闘しているより自分のアラートがマズイって言ってる
「…まぁ、可愛いんじゃないか」
これが一番だろ、あまり褒めすぎると凛に叩かれるし褒めないと他が怖い
「う……」
「なに?」
「うれしい……//」
は?
かわいい……
勝手に手が蒼の頭の上にいった
触る直前で止まる
…何やってんだ俺は
この子達をここに強制してしまってる側だろ
そんな事する資格などない
「撫でて……くれないの?」
蒼が上目遣いで言ってくる
それは反則だろ……
―――
「意気地なし―」
すっごい言われよう
あの後、結局理性が勝ち、部屋を飛び出た
戻ってきたら紬と真白と莉瑠は相変わらず、蒼のファッションショーをしていた
「お前だってなんでいつもあんな蒼一筋みたいな感じなのにこっちで喋ってんだよ」
「いや、だって私あんな可愛い蒼見てたら制御できない」
「何いってんだ」
「いや、だってあの蒼、今すぐにも持ち帰って食べちゃいたくない?」
「それは同意だが、普通に口走るお前はおかしいと思うぞ」
「そうかな〜」
「ねぇ…//これ//露出多くない……//」
三着目、全体的に短めの衣装。お腹や太ももが結構見えている
まぁ確かに結構露出がまぁ多めの服だな
あんなの、よく着るな
わかんないな、やっぱ女心は
「ソンナコトナイヨ、アオイ」
「ねぇほとんど棒読みやめて、せめて否定して」
「いやーだってそれが可愛いと思ったんだもん」
「でも……普通の服はお腹なんて出ないよ!!」
「いやー可愛いから良いじゃん」
「よくない!!その…//ヴィーゴさん居るんだよ!!」
それはほんとにやめてほしい
一応上官だ、部下に手を出すなんてゴミなことしたかない
てか、したら凛にほんとに撃たれる
「ヴィーゴさんはどう思うのー!!」
いきなり紬が振ってきた
「いや、ほんとにやめて。俺コメントしたらどれでも変態扱いされるだろ」
「そりゃ見てるし、あ、でも蒼は見せたいか」
「そんなわけないでしょ!!」
「えーどうかな」
「見せたいわけ無いじゃん!!こんなはしたない格好……//」
「えー確かめてみないと、わかんないじゃん」
「え?」
その瞬間、えいっと紬が蒼を入口側に飛ばした
「え、ええー!!」
そう、思いっきり俺の方に飛んできてキャッチする形になってしまった
―――
確かめてみないと?
そこで紬がえいっと私を入口側に押し込んだ
ヴィーゴさんがいる方に飛んでいった
で、綺麗にヴィーゴさんにキャッチされる形になった
「ご、ごめんなさい!!」
ヴィーゴさんは何も反応がない
てか、あれ?鼻血出てる!!
「ヴィーゴさん!!大丈夫ですか!!」
「大丈夫では……ないかも」
:四章 戦争なんだ:
「今日はGを経験してほしいので教官の後ろに一人ずつ乗ってもらう」
私、凛、紬、真白、莉瑠、全員綺麗にパイロット志望だったので訓練が一緒の内容になった
やったね
「今回教官が俺と後輩しか居ないから二人ずつな」
「私、ヴィーゴの方はやだな」
急に後輩のほうが前に出て凛の首を掴んだ
「パーツ!!ヴィーゴ大佐になんて口聞いてんだ!!」
横に居たヴィーゴの後輩と紹介されたものが怒号をあげた
ここ二ヶ月ヴィーゴにしか教えられていなかったのでこんな怒号をあげられたことなんてなかった
こわい
「拓真、死にてぇのか」
聞き慣れない声、ヴィーゴさんの低い声だった
ヴィーゴさんの気迫など普段は全く感じないのにすごく威圧される
後輩の拓真がすこし、身を引いた
「俺の子達だ、なんか手だしてみろ。てめぇが消えるぞ」
「…すいません、大佐」
パン、とヴィーゴが手を叩いた瞬間、いつもの雰囲気に戻った
まるでまとっている気配が違った
「はい、ごめんねーこいつこんな感じだけど腕だけは確かだからさ信用してやってよ」
「あんた大佐だったのね」
凛がいつも通りに話しかけるが声が非常に震えている
そう、こわい。あのヴィーゴはヴィーゴじゃなかった
あの、入った最初に他の教官を躊躇なく殺したヴィーゴと一緒だ
「おいおい、そんな怖がってるのか?いつものゴリラはどうしたんだよ」
「ごめんなさい…」
「はぁお前が俺に謝るなんて相当だな、わかった拓真お前の方に乗せるのは怖がってない、真白と、紬だけだ。」
「了解です、大佐」
「絶対にお前もだが生きて戻れよ、死なせたら許さないからな」
「じゃぁ最初は、拓真の方に紬、俺の方に蒼かな」
「あー蒼取りに行ったーそのまんま持ち帰んないでよ」
「なんだと思ってるんだよ俺のこと」
「んー変態」
「優しい人」
「よかった蒼からそう思われてるなら良いや」
「私は!?」
「ゴリラからどう思われても気にならん」
「よし、ここでグレネードのピン抜いてあげようか」
「よし、やめろ」
あいかわらず、夫婦漫才かな?
「はいはい、時間ないんだから。さ、蒼少し失礼するぞ」
そう言ったヴィーゴが私の脇に腕を入れ持ち上げ、戦闘機のコックピットの後ろの席に乗せてくれた
「ありがと、ヴィーゴさん」
「おうよ」
その後から、ヴィーゴさんがよっこいしょと言いながらコックピットに乗り込んだ
「この戦闘機なんていうんですか?」
すごいかっこいいし、私もこれに乗れるようになりたい
私もヴィーゴさんが乗ってるやつに乗りたい
「F-92、ファランクス、どうだ?かっこいいだろ?俺の相棒だ」
「F-92って前の戦争で活躍した戦闘機ですよね?」
F-92《ファランクス》
前回の六十年前の戦争で多くの英雄を出したと言われている戦闘機
しかし、速度、旋回性能を優先しすぎて装甲は紙のように柔らかい
「逆に、なんで知ってんだよ」
「座学やったじゃないですか」
「あぁ、あのほとんどプロパガンダのゴミ座学な」
「軍人がそれを言うのはどうなんですか?」
「俺ほとんど、国の政策反対派なんだが?」
「そうでしたね」
そこで、先程の男性の声が通信機からした
『大佐、こちら紬さんと自分準備完了です』
『完了だよーた・い・さ』
あれ?紬と普通にしてるんだ拓真って人
「やめて、お前に上官呼びされるとキモい。てか、いつの間にか仲良くなったのか?」
『そうそう、拓真さん結構ただ臆病なだけだったんだよねー』
『ちょっ紬さん!!』
「俺に言ったことないじゃん」
「上官としての威厳ゼロですね、大佐?」
「やめてよ、蒼まで言わないで」
『それより、早く作戦始めますよ。大佐』
「あぁお前の大佐呼びが安心する時が来るとは」
『はぁ、先に発進してますね』
「あぁセンサー見ながる行けよ、敵が映った瞬間伝えろ」
『イエッサー』
ガタン、とカタパルトに戦闘機が乗っかり
戦闘機がカタパルトによって発射された、
その瞬間、ブオンっという空気が飛んでいったような音がして
体にすごい圧がかかる
一瞬気絶しそうになったがぎりぎり持ちこたえる
「おぉ、蒼。持ちこたえたか。これ最初は気絶する人多いんよ」
「ヴィーゴさん……は…余裕…ですね」
『私も思ったより余裕ー』
『ちょっ紬さん!?暴れないでくださいよ!!』
ヴィーゴがあっちの戦闘機に乗ってる二人の会話を無視して続ける
「まぁ数年乗ってるしな、流石に慣れた」
「すごい…ですね、何年ぐらい乗ってるんです?」
「んー7年ぐらい?」
「よく生きてますね」
「でしょ、すごいっしょ」
「ヴィーゴさん、相変わらず子供なのか大人なのかわかんないですよ」
「同い年なんだから、お前らが子供なら俺も子供なんだが?」
「ふふ、そうですね」
やっぱ子供みたい
「あ、そうだ、ヴィーゴさん」
「なんだ?」
「戦争終わったら、私用に服買ってくださいよ」
「え、良いのか俺で?」
『私も連れてってよー』
「みんなでねー」
「まぁこれが全部終わったらな」
「そうですね、全部終わったら、みんなで遊びましょ」
「あぁ、そうだな」
言ってからすっごい恥ずかしくなってきた
「それより……ヴィーゴさん?」
話をそらそうとしたらヴィーゴさんが外の一点を見たまま固まった
「ヴィーコ゚さっ」
言っていた刹那
「拓真!!回避だ!!」
言うと同時にアラートの音が通信機から聞こえる
短くて鋭い
ミサイル警告のMWSのアラートと
子供が縋るような紬の声が
『あおい』
『たすけて―――』
通信が切れるのと同時に閃光
目の前を飛んでいた、戦闘機が炎に包まれた
「紬!!」
「くそったれ!」
「紬!!紬!!なに!!何があったの!!」
すぐにコックピットの視界から水平線が消え、青い空しか映らなくなった瞬間私の視界が少しずつ端から暗くなっていき世界が遠ざかるように真っ黒になった
―――
「拓真!!回避だ!!」
空気の絶妙な歪み、ステルス特有の景色の遅れ。
それが見えたのと同時に叫んだ
『あおい、たすけて―――』
ツーと、通信が切れる
「紬!!」
後ろで蒼が叫ぶ
「くそったれ」
冷静になれ、死んだやつは戻らない
それは帰れない
なら俺が今取らなければいけないことは一つ
蒼を生きて返す
たとえ、俺が死んだとしても
「紬!!紬!!何があったの!!」
一旦、彼女の精神が心配だ
少し手荒になるが
そこで、俺は操縦桿を思い切り引いた
高度がどんどん上がり一瞬で1万フィート上がった
後ろの蒼が静かになる
Gによって気を失ったのだろう
これでいい、集中できる
俺は一瞬目をつぶって集中する
目を開いた瞬間、目の前が白く滲み
体の重さも重力も何も感じなくなった
まるで、自分が飛んでいるかのように
ただ、空と一体になった感覚があった
そのまま、上がった高度を更に上げ、
瞬時に真下を向く
急降下
ステルス機の少し上で機首を上に向ける
その瞬間に機銃掃射
ステルス機に無駄弾を吐かず全弾ヒットさせる
「落ちてろ、クズが」
:五章 紬は?:
ピピっとアラームのようなもので目を覚ます
目を開けると白い天井がぼやけて見える
どこ?
「起きたか」
声のした方を見るとヴィーゴさんが俯くように膝に肘を置いて座っていた
「ヴィーコ゚さん」
他にも後ろには凛がいた
紬は?
紬はどうなったの?
『あおい、たすけて―――』
「うっ、」
吐き気が込み上げてきた
そうだ紬は
いや、そんなことはない。
「大丈夫か、蒼」
「ねぇ、ヴィーゴさん……紬は?」
ヴィーゴはただ握っている拳の力だけが強まった
お願い、別のとこにいるって今居ないだけだってそう言ってよ
「………」
「なんで、黙るんですか……どっかに遊びに行ってたり哨戒任務か、寝てたりするだけじゃないんですかー」
そうだ、私だってさっきまで寝ていた
紬だって
紬だって………
寝ているはずだ
……それは目を覚ますの?
「お願いです……寝てるだけだって。ただいつも通りサボって寝てるだけだって」
「………」
どう言っても、ヴィーゴさんは話そうとしない
地面の一点を見てこちらを見ない
「お願い……紬は生きてるって」
「笑ってるって」
「そう言ってくださいよ!!」
「………」
何も話してくれない
もう、それは言ってるじゃない
もう
紬は
ここにはいないと
生きていないのだと
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