本作は、説明ゼロ・拒否権ゼロ・逃走不可という強制イベントから始まるラブコメディ
高校一年生最後の登校日。
「今日はお祝いだから」
そう言われて連れて行かれた老舗料亭で、桜庭大和の人生は一気に方向転換する。
幼馴染は、許嫁でした。
そして――同棲、始まります。
説明なし、拒否権なし、親は全員笑顔。
あまりにも急展開なのに、なぜか不思議と嫌じゃない。
その理由は、幼馴染同士の距離感の甘さにある。
同棲生活はドキドキの連続だけど、派手なハプニングよりも
・何気ない会話
・近すぎる生活音
・無意識に重なる距離
そういった日常の積み重ねが、とにかく丁寧で優しいと感じた
特に印象的だったのは、感情が溢れたときの距離の縮まり方だ。
言葉で説明するよりも先に、腕が伸びてしまう。
幼馴染だからこその安心感と、許嫁として意識し始めたときの照れや戸惑い。
その二つが同時に存在していて、触れ合うたびに関係性が少しずつ変わっていくのが伝わってくる。
無理やり始まった同棲生活なのに、気づけば「この二人なら大丈夫だ」と思えてしまう説得力がある。
親たちの強引さすら、二人の相性を知っているからこその後押しに見えてくるのが不思議だ。
甘さはしっかりあるのに、騒がしくない。
派手な恋愛イベントに頼らず、一緒に暮らすことで生まれる温度や距離感を大切にしているからこそ、
読後に残るのはドキドキよりも、ほっとする幸福感。
強制イベントから始まる物語でありながら、その先に描かれているのは、
「選び直していく恋」の過程だ。
幼馴染×許嫁×同棲。
その全部が好きな人には、
安心して甘さに浸れる一作だと感じた。