白いワンピースの少女に連れられたそこは、サカサマの世界。時渡りの運命に導かれて、同じ時間を繰り返し廻り続けることに~上等だ、何度だって廻ってやる~
蒼生芳春
第1部
0 何回目の死、そして
カイは、身も心も、カオスの縁ふちに佇んでいた。
俺は、また死んだ。
胸に槍が刺さった感覚までリアルに残っている。胸を貫いた槍が、心臓をかき混ぜる感触まで。
「……ッ!!」
カイは跳ね起きた。
息が苦しい。心臓が暴れる。喉が乾いている。
そして、すぐに理解する。
――また戻っている。
月明りがカーテンの隙間から覗かせる。
昨日までの血と煙と焦げた臭いが、嘘みたいに消えている。
カイは胸を押さえた。槍で貫かれたはずの場所。もちろん、傷はない。
「……ふざけんな」
これが一回目なら、悪夢で済ませられた。
でも違う。
もう、何回目かもわからない。死ぬたびにここへ戻される。
最初は混乱、次は絶望だった。その次からは、感情が壊れていった。
――どうして、こんなことに......。
妹のアキと、友達のシホが消えて、気づけば、見知らぬ国で殺され続けている。
しかも、殺す奴が、強すぎる。
(逃げるの、上手いね)
あの声。あの槍。あの笑い方。
思い出すだけで胃が捻れる。
カイは立ち上がろうとして、膝が崩れた。
何回も死んでいれば慣れるのか? ただ、毎回ちゃんと痛いし、毎回ちゃんと怖い。
そのとき、頭の内側で、誰かが笑った。
(起きたか)
声は、自分のものじゃない。でも耳で聞くのではなく、脳の奥から直接響くように聞こえる。
「お前、こっちの世界でも出てくるのか」
(当然だ。俺は、お前の中にいるんだからな)
背筋が冷える。
俺の身体に、俺以外が居座っている。
現実世界と裏の世界。
この世界に来てから、抜け出せないループに囚われてしまった。
どうやっても終わらない。
何度繰り返そうと、同じ結末を辿る。
この世界は、俺に勝利を許さない。
(やっと見つけたよ、カイ)
頭の中であの少女の声が反芻する。
あそこからすべてが始まる。そして、決して逃げられない。
――逃げる? 俺が?
(勝つまで、やるんだよ。何度だって)
この言葉を聞いた瞬間、カイの心の中で歯車が回る音が聞こえた。
カイの中で何かが変わる。
人はいつでも変わるときは一瞬だ。
――上等だ。何度だって廻ってやる。
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