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この世界にはメンヘラとか地雷とか呼ばれる人々がいるけれど、そういうラベルを貼られるのは大体二十代である。三十代を超えると何だかんだで中々見なくなる。
其れはファッションとしてのメンヘラだとか地雷だからか。其れとも貼られるレベルが変わったからだろうか。
ふと指を見てみると、右手の爪が割れていた。指で換算すると、凡そ三本程。割れた事に自分で気付いては居ない。何時も気が付くと体の何処かしらが傷んでいて、其れに一切気付かない。
けれどもメンヘラや地雷とか呼ばれる人の格好や爪は割とちゃんとしている。つまり無自覚に傷を負っている事が少ない様に思える。
私の中で、メンヘラや地雷は自覚なく周りを傷付けて居るように思えていたが、実際はそうではないのだろうか。
昨日程疲れ果ててはおらず、比較的意識が明瞭な鏡花が鞄やコートを置いて、リビングに出てきた。席に着くと、淡々とこんな話を始めた。
「ねぇ、瑠衣たん。私、ずっと疑問に思ってるんだけど、三十路超えると『メンヘラ』や『地雷』っていう呼ばれなくなるじゃない? 其れってその人本人が変わってまともになったって事? それとも、周りのラベルの貼り方が変わって『危ない人』という枠に押し込めたって事?」
出されたシチューに目もくれず、鏡花は自らの爪を弄りながらそう言った。近頃は疲れ果てて思考どころでは無かった様だが、今は少し考える事にエネルギーを裂ける様だった。
メンヘラや地雷というのは、言わば関わると厄介な人間の事を指す。自分の感情を制御出来ず、相手を困らせる生き物。つまり感情の制御が出来て居ないという事は、本人に自覚がないからではなかろうか?
「周りのラベルが変わったからではないか?」
そもそもそんな感情的な生き物が、高々三十路を超えた時点で落ち着くとは思えない。
すると鏡花は漸くスプーンを持ち、じっと此方を見詰めてきた。
「私もそう思うよ。帰ってくるときに、右手の爪が数本割れてたんだ。気付かなかった。メンヘラとか地雷と一緒。痛め付けてる事に気付いてないの。でも格好はちゃんとしてるよなって。
この矛盾。どう対処するべきか」
そう言いながら、こめかみを弄る。どうやら何時ものペースに戻って来た様だった。
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