女の子にたかるヒモJDになっていた未来の私が、JKの私を堕としに来ました

伊咲 

第1話

 私、雨宮柚希は分かってしまった。


結局同級生の女の子達と仲良くなるには、スキンシップと気遣いが一番の近道なんだって!そして、直接的なコミュニケーション!自分が相手の事を好きだって事は、ちゃんと伝えなければいけないと思う。


なんだか私が女子の友達と話す時、みんな心なしか顔が赤くなったり他の子と話す時より一層声が高くなったりするのはよく分からないけど、私はいつも通りの毎日を過ごせばいい。そうすれば自ずと友達は増えると気付いた。気付くまでに、十六年かかった。



 今日も高校一年C組の教室に入れば、私の横の席で小柄なポニーテールの女の子が本を読んでいる。朝中藍里。私の大切な親友の一人だ。 藍里は内気な性格で、クラスの女子グループから仲間外れにされてしまいいじめられていた。


だから私がいじめっ子を全員殴り飛ばして、彼女と仲良くなった。その後に一人ぼっちの藍里をギュッとしたら泣いていたのを覚えている。小動物めいた気弱な態度が時折たまらなく愛おしくなり、抱きしめたくなる。だから私は今日も、後ろから彼女を抱きしめた。


「あ、あの、え?」

「おはよ、藍里ちゃん」

「う……、ごめん。こういうの、あんまり慣れてなくて」


途切れ途切れの声を吐きながらも、身体に回した腕にピトっと指を何本か乗せてくれる。動物が木の枝にしがみつくみたいに。


「あまり小動物を困らせてはいけないよ。柚希は私のペット、じゃなくて可愛がられる方が似合うからね」


すると、ウェーブをかけた髪を揺らしながらもう一人の親友がやって来る。

天崎由芽。なんだか高嶺の花っぽくて誰も近付なかったみたいだけど、本当はお世話好きで可愛がって貰っている。


「由芽、この前のテスト勉強教えてくれたから簡単だった!ありがと!好き!頭撫でで!」

「おー、そうかそうか!やれば出来るんだね」


藍里を抱きしめながら、由芽に頭を撫でられる。冬の朝の教室だから、触れ合う事で身体が暖かくなる。


「柚希ちゃん。いろんな人に好きって言うの、辞めた方が良いと思う……」

「何故に?良い事じゃん」


別に、同性なんだから良い事だと思う。ここは女子高だし。


「藍里は君の事を独占したいのかもしれないね?」

「あ、その。そんなあれは……」


わたわたと慌てながら、顔を真っ赤にして藍里は俯く。 少々癖があるかもしれないけど、みんな大切な友達だ。 だから自然と毎日口角が上がってしまう。



そうして昼休みもいつもの場所でみんなと昼食を取ろうと、私は誰よりも先に屋上へ上がる。

あの頃と違う自分が一人じゃない環境に感謝し、空をぼーっと見ていると。

背後で衝撃音と共に革靴の足音が聞こえて来た。

振り返るとそこには。自分で言うのもあれだけど、私の進化先みたいな人間がいた。


私と寸分違わぬショートカットの髪、ぱっちりとした二重の瞼、身体の半分くらいを占めているようにも見える足の長さ。少し気怠そうに寝癖を直す動作が様になっている。


「……私は雨宮ユズキ。変えに来たの、ヒモ女子大生な私の未来を」


私を名乗る不審人物。目の下には少し隈が見え、不健康そうな様相に相乗効果をかけていた。そして何故か、女子大生を名乗っているのに私と同じブレザーとスカートを着ていた。


「証明出来る物、ある?」


恐る恐る、そう尋ねる。


「中学三年から高校入学までの春休みに、人と接する方法を留学予定の妹からみっちり学んだ。これでいいかな」

「……正解」


その結果、適度なスキンシップと気遣いを学んだ。


「雨宮柚希。あなたは五年後、沢山の恋人に刺され死にかける羽目になる。だから時空転移の技術を編み出して過去を変えに来た。という訳で、私と付き合って」

「は?」


いきなりにいきなりが重ねられ続ける。

おまけに手を取られた。自分自身なのに、白く華奢ですべすべしていて少し見入ってしまった。


「あなたが築いてきた友人達はみんな恋人になるの。そして私は全員のヒモになって、愛想尽かされて刺される前に時間を移動した」


……未来の私は、中々最悪な存在になっているようだ。


「つまり、今の友情を切ってしまえば未来を変えられる。私があなたを堕として他の女で満足出来なくなれば、未来は変わる」


……そんなド屑なヒモに、良いようにされる訳にはいかない。


「断ったら?」

「藍里や由芽のヒモになる。未来に帰るのは怖いし、今のね」


こんな奴が未来の自分なんて、認めたくない。


「そんな事、させないから」


だから寧ろ、私が未来を変えてみせる。


「良いよ。付き合う」


付き合って、腐った未来の自分を塗り替えてやる。今いる大切な友達を守る為に……。


友達のヒモになんてならない為に!

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