雨の日の話

櫻庭ぬる

第1話 雨の日

雨は嫌いだ。

靴は蒸れるし、荷物は濡れるし、水たまりにははまるし。


雨はこれからしばらく続くらしい。

この地域の冬にしては珍しい気がする。


冬の雨の日だからか、以前怪我をした右脚が余計に痛む。

レインコートのフードを目深に被って、わたしは早朝の散歩からの帰路についた。


もうすぐ、というところで、歩くスピードを落とした。

家の前に知らない子が立っているのが見えたのだ。


小学校に行くか行かないかくらいの男の子。

傘もレインコートもない。

ずぶ濡れだ。


不安と疑問が同時に沸き起こる。

まだ六時にもなっていない。

こんな冬の早朝に子どもがうちにくるような用など、検討もつかない。


恐る恐る、近づいて行く。

わたしが近づくと、子どもはこちらを振り向き、満面の笑みを浮かべた。

わたしの方に駆け寄ってきて、しがみ付く。


「ママ!」


その言葉でわたしは瞬時に納得した。

あ、そうか。これは人違いなんだ。


だって、わたしに子どもはいないもの。

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