幻視

「蝋燭ありませんか」

少年は白い息を吐きながら、両手をすりあわせる。

「ねぇよ」

雑貨屋の主人は答えた。

冬になれば、蝋燭が暖炉の代わり。

在庫があるとすれば、自分用に残している1箱だけ。

とぼとぼと帰る少年を、主人は静かに見送る。

一瞬見えたあのアザは、きっと幻だと思いながら。

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