旅のまにまに
ぴょ
0歩目
物語の主人公というものは、どうしてだか王都から少し離れた小さな農村で育つ。
「大きくなったら旅をするんだ!」
「ルカは元気ねぇ。」
例外なく私もそうだった。
私、ルカ・サリオンは田舎の農村で育った元気に夢を見る少しイタズラ好きなありふれた女の子。
小さな少女はクレヨンで描いた将来の夢を大きく掲げ父と母、それから自分によく似たもうひとりの少女の前でくるりと回る。
「それなら私は――」
視界が白くぼやける。
まぶたを開いた。
「……懐かしい夢を見るもんだ。」
葉と葉の隙間から溢れる木漏れ日に少し目を細める。旅の途中心地のいい場所で昼寝をしていれば懐かしい夢も見るらしい。
はて、彼女はあの後なんと言っていたのだろうか。
覚えていないことを思い出そうとしても思い出せないもので、小さなもやつきを抱えたまま体を起こし近くに置いていた鞄から水を取り出して一口飲む。
喉を通る感覚に、現実が戻ってくる。
疲れも少し取れたところで立ち上がり、鞄を背負い、コンパスを開いた。
「……北か。」
針は、迷いなく北を指している。
それを確かめて、ほんの一瞬だけ悩む素振りを見せてから蓋を閉じた。
「まあ、いいか。」
甚だ、その方位に従う予定はない。
私は針が指していた方向とは真逆の道を選び進んだ。
旅の行先は幸か不幸か。
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