第十九章 イグニス工廠への道

連合が発足してから、半年が経った。


各国での量産体制が整い、連合全体で二百機を超える甲型が配備された。訓練を終えた操縦者も、五百名を超えた。


だが——


「帝国が、動き出した」


リリアナが、深刻な顔で報告した。


「本格的な侵攻を、準備しているようです」


「予想通りだな」


正義は、地図を見つめた。


「連合がこれ以上強くなる前に、潰しにかかるつもりだ」


「どうしますか」


「待ち受けるのではなく——」


正義は、地図の一点を指さした。


「攻める」


「攻める、ですか?」


「ああ。ここだ」


正義が指さしたのは、帝国領土の奥深く——


「イグニス工廠」


「帝国の魔導兵器製造拠点……」


リリアナの顔が、強張った。


「そこを、攻撃するのですか」


「そうだ。敵の生産拠点を叩けば、戦争の天秤が傾く」


「でも、防御は厳重なはず——」


「だから——」


正義は、別の書類を取り出した。


「情報を集めた」




情報は、マルコが集めてきたものだった。


「イグニス工廠の警備体制、施設の配置、魔導兵器の配備数……全部、調べてきました」


「よくやった」


正義は、マルコの頭を撫でた。


少年は、照れくさそうに笑った。


「へへ、配達で鍛えた足と、元盗賊の目があれば、これくらいは」


情報によると、イグニス工廠は山岳地帯の奥深くにあった。周囲を城壁で囲まれ、警備の魔導兵器は常時三十機以上。正面から攻めれば、甚大な損害は避けられない。


だが——


「一つ、弱点がある」


正義は、地図を指さした。


「ここだ。工廠の動力源となる『魔力炉』」


「魔力炉?」


「ああ。この世界の魔導兵器は、魔力を動力にしている。イグニス工廠は、その魔力を『魔力炉』という施設で生成している」


「それを破壊すれば——」


「工廠全体が、機能停止する」


リリアナの目が、輝いた。


「でも、魔力炉は工廠の最深部にあるはず。どうやって——」


「少数精鋭で潜入する。主力部隊が正面で陽動している間に」


「誰が行くのですか」


正義は、静かに答えた。


「俺だ」




作戦会議が開かれた。


「正面攻撃部隊は、連合軍の主力百五十機。指揮は、グレンが執る」


「了解した」


グレンは、静かに頷いた。


「潜入部隊は、俺とエルザ、そしてマルコの三人」


「少なすぎないか」


エルザが、眉をひそめた。


「人数が多ければ、見つかる確率も上がる。三人が限界だ」


「……わかった」


エルザは、拳を握った。


「信じる」


「ありがとう」


正義は、リリアナを見た。


「王女殿下は、後方で指揮を。万が一、俺たちが戻れなくても——連合は、あなたが率いてください」


「……マサヨシさん」


リリアナの目に、涙が浮かんだ。


「必ず、戻ってきてください」


「ああ。約束する」


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