旧■■町における記録

境井

【ホラー考察】旧■■町における噂について【生配信】


 【ホラー考察】旧■■町における噂について【生配信】


 以下、配信内容の書き起こし。


 数分間の待機画面の後、サムネイル画像が表示される。

 その後、配信者と見られる人物が画面に映る。

 配信者は黒いマスクを着用し、目元が隠れるほどの長い前髪である。年齢は二十代前半から半ばほどの男性に見える。


「えー、こんばんは。ホラー考察YouTuberのー、ハルトです。今日はサムネにもある通り、『旧■■町における噂について』を考察します。」


 ここで約三秒間の沈黙がある。


「まずは、この『噂』とはどんな話なのか。発端は、ある視聴者から頂いたDMです……」


 画面構成に変化はなく、配信者の声のみが続く。

 以下は、その内容を要約したものである。


 ・視聴者からDMが届いた。

 ・出身地である町では、水難事故が比較的多いとされている。

 ・ただし、その事故には腑に落ちない点があるという。

 ・近隣住民に話を振ると、話題を避けるような反応を示される。

 ・理由が分からず、不思議に思っているため、興味があれば調べてほしい。

 ・以上の内容が簡潔に綴られていた。


 配信者はこのDMを読み上げた後、短く息を吐く。

 その間にも、コメント欄には反応が流れ続けている。


 いくつか流れていくコメントのうち、一つを拾う。

 

 

「……『なんかフワフワしてんな』?」


 コメント欄には、それに同意する反応がいくつか流れる。


「そうなんですよ。僕もそう思いました。詳しく聞こうとしても、『そうとしか聞いていなくて』とか、『取り上げてもらえるとは思わなくて、詳細までは……』とか。」


 ここで、独り言のように「うーん。まあ、ありがちか。」と呟く。

 

 一拍置いて、続ける。


「でもまあ、そこは僕の仕事なんで。話がふわっとしとっても、掘り下げんのはこっち側。せやから、別にこのDMくれた視聴者さんが悪いわけじゃないですからね?」


 軽い笑い声が入り、コメント欄もそれに反応する。

 全体として、和やかな空気が維持されている。


「強いて言うなら、『適当に資料作っといてー』て言われるのに、ちょっと似てるかも。」


 わずかな間。


「……似てないか」


 再び、笑いが起こる。


「というわけで、これはもう、自分で調べるしかないなと思って。」


 配信者は画面越しに視線を落とし、言葉を続ける。


「まずは、過去五年分。その町で発行されている、地元新聞の調査から始めました――」


 ここで、配信は次の話題へと移行する。

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